年間200万人の観光客が訪れる“蔵の街”栃木市。この街で観光遊覧船の船頭になった加藤盛正さん(66歳)と、それを支える妻、清子さん(66歳)が主人公です。定年退職後、「妻と一緒になにかしたい」と思った盛正さん。キャンピングカーでの日本一周旅行を敢行します。旅先で受けた親切に心打たれた盛正さんは、「次は自分が、栃木市を訪れる人に親切を返したい」と考える様になります。時を同じくして、舟運で栄えた江戸時代の風景を復活させようと、“蔵の街 遊覧船”が町おこしとして始まりました。船頭募集を目にした盛正さん。船頭としての新しい生活が始まりました。
川沿いに建つ材木問屋跡を臨みながら、ゆったりと進む船。江戸時代、商都として栄えた歴史に思いを馳せる20分間の船旅です。この日は、妻の清子さんがお友達を連れて乗船しました。清子さんに「がんばって!」と声をかけられ、張り切る盛正さん。船頭を始めて「生き生きしている」と清子さんは言います。時々、こうしてお友達を誘っては、遊覧船の魅力を広めている清子さんです。
週に2回の船頭。「恥ずかしい格好では出せない」と清子さん、身支度を手伝います。玄関前では、なんと髪に櫛まで入れる徹底ぶり!“縁の下の力持ち”のおかげで、今日も張り切って出発する盛正さんです。
ある朝、集合した“蔵の街 遊覧船”のメンバー達。この日、巴波川に鯉のぼりの飾り付けが行われました。近所の方も協力して、鯉のぼりがついた紐を1本1本縛っていきます。およそ1時間後、色とりどり1200匹の鯉のぼりが川を彩りました。空を泳ぐ鯉のぼりの下、1番船には地元の小学生が乗船。
いまや春の風物詩として定着した“蔵の街”の風景です。
夜、集会場に集まった船頭達。皆さんボランティアで船頭をしており、仕事を持っている方、定年退職された方などいろんな方が集まっています。月に一度はこうして勉強会を開き、栃木市の歴史や文化を学んでいます。この日は、江戸時代、船頭達に歌われていたという“栃木河岸船頭唄”の練習です。「もっとお客さんに喜んでもらいたい」との思いを持ち、研鑽に励んでいます。
週末、盛正さんの友人、阿久津さん夫婦が栃木市に遊びに来ました。張り切って案内役を買って出た盛正さん。“蔵の街”の風景を案内しながら回り、最後にやって来たのがこちら“寺内万年筆病院”。その名の通り、万年筆のお医者さんです。全国から届く万年筆を、ひとつひとつ手作業で修理する寺内さん。歴史が残る街に、古い物を大切に使う習慣。阿久津さん夫婦も大満足の“蔵の街”散策となりました。