今回は、三陸海岸のほぼ中央に位置する岩手県宮古市が舞台です。主人公は、螺鈿(らでん)職人として自宅で工房をはじめた澤井正道さん(60歳)と妻・晶子さん(50歳)。元々は結婚式などで使うかんざしを作る職人だった正道さん。その後晶子さんと出会い結婚、2人の子供に恵まれました。しかし晶子さんの「安定した収入の仕事について欲しい」という願いから、もの作りは、趣味で続けながら、水道工事会社に就職することに。やがて一家は岩手県宮古市に移住。その頃から貝の魅力に惹かれ、仕事の合間に螺鈿細工に没頭するようになりました。
ところが、2005年の暮れ、会社が突然の倒産。再就職先を探すも見つかりませんでした。そんな時、晶子さんに背中を押され、趣味として続けてきた螺鈿細工を仕事にすることを決意。
2009年1月「澤井工房」を立ち上げました。日々、貝を使ってきらびやかな作品を作り続ける正道さん。
買ってくれた人が満足し、後世まで残る作品を作ることが、ご夫婦の夢。
これからも素敵な作品を作り続けてくださいね!
かんざし職人時代に培った技を駆使して螺鈿細工を作る正道さん。大変なのは、1~2ミリ角に砕いた貝を、一つ一つベースとなる木に貼り付けていく作業。そして、さらに貝の上に何度も漆を塗り、磨き出していきます。この作業は、薄い貝を磨き過ぎて剥がれてしまわないようにとても神経を使う作業なんだそうです。
そして約1ヶ月かけて、一つの作品が出来上がるんです!
螺鈿(らでん)はおよそ1200年前、唐の時代に中国から伝わったと言われています。アワビ貝や夜光貝などの内側の光沢部分を薄く切り取り、それを漆器や木等に貼り付けて文様を描いたもの。
正倉院宝物殿にある、びわなどが有名です。
現在も伝統工芸品として、各地で作られています。
最近、正道さんに教わって、螺鈿細工を始めた晶子さん。
今晶子さんが一緒に作って、人気を集めているのが“螺鈿携帯ストラップ”。少しでも螺鈿の良さを知ってもらいたいと、晶子さんがデザインを考えて作っています。手頃な値段で可愛らしいと、今では澤井工房の主力商品の一つになっています。
螺鈿職人として、正道さんがどうしても見たかったもの。それは、岩手県平泉町にある中尊寺の金色堂。国宝に認定されたその建物の中には800年以上前に作られた、螺鈿細工があるんです。
ある日見学に行ったお二人は、金色堂を前に絶句。
先人の技に圧倒された正道さん。自分の作る螺鈿細工も、何年も残っていく様な作品にしたいと、心新たに頑張る決意をしました。