今回の舞台は、美しい海が広がる沖縄県の中部に位置する中城村。「沖縄そばと郷土料理の店 悠愉樹庵」を営む島袋清子さん(62歳)と持ち家を店舗に改装した夫の一良さん(62歳)が主人公です。JAに勤め、食育について指導してきた清子さんは、沖縄の食文化が失われつつあると感じ、早期退職後の2008年11月、一良さんと5人の娘の協力のもと「沖縄そばと郷土料理の店 悠愉樹庵」をオープンしました。開店から一年半が経ち、地元の常連さんも増えてきました。でも、島袋さんご夫婦はまだ満足していません。「悠愉樹庵」の目標は、中城村へ観光に来たお客さんに、沖縄の伝統的な、家庭の味を知ってもらうこと。その目標に向かって、島袋家は家族一丸となって頑張っています。
島袋家の5人の娘さんは、「悠愉樹庵」を営む清子さんの心強い味方です。調理に忙しい清子さんのサポートから接客、配膳までカバーしてくれます。そして清子さんの味付けを間近で見て少しずつ、「悠愉樹庵」の味を受け継いでいきます。清子さんは「いつか店を娘たちに譲りたい」と考えています。だからこそ、娘さんたちに厳しい清子さん。娘さんたちが「悠愉樹庵」の味を担当するのもそう遠くないかも知れません。
「悠愉樹庵」の庭に咲くハイビスカスやシークヮーサーなどの花々を育てている一良さん。そんな庭の草むしりは、4人のお孫さんが手伝ってくれています。一良さんひとりでは時間のかかる作業も、元気いっぱいの4人にかかればあっという間。清子さんを手伝う娘さんたちにも負けないぐらい、心強い味方です。家族が一丸となって営む「悠愉樹庵」は島袋家の絆の結晶です。
沖縄伝統の家庭料理は、ルーツをたどると琉球王国の宮廷料理が庶民に伝わったものといわれています。ひとつひとつ手間暇をかけて丁寧に作り礼節を重んじて振る舞うと言うのが、宮廷料理におけるおもてなしの心。その心を料理とともに残していきたいと清子さんは考えています。5人の娘さんと共に「悠愉樹庵」は、今日も沖縄家庭料理を伝えていきます。
「悠愉樹庵」の自慢料理のひとつ、てびち(豚足の煮付け)。清子さんが親から受け継いできた料理法で、7時間煮込んで調理します。完成した「てびち」は味がしみこんで、とろっとろのプリップリに軟らかくなっています。宮廷料理における『手間隙をかけて作る』というおもてなしの心は、「悠愉樹庵」自慢料理の「てびち」にも、きちんと受け継がれています。
沖縄産、それも中城村で採れた野菜を使って料理を作りたいと考えている清子さん。「悠愉樹庵」の近所で直売所を出している、比嘉澄子さんを訪ね、野菜の仕入れです。清子さんがJAに勤めていた頃から知り合いの比嘉さんはお店を営む清子さんを応援しています。清子さんも地元の野菜を使って期待に応えようと、料理を作ります。