坂の多い町、長崎県佐世保市が舞台です。そんな町に今年1月、オープンした「Nobu cafe」。
マスターの櫻井信行さん(60歳)は、元高校教師で、バレーボール部の監督だった方です。
かつては妻の陽子さん(56歳)と共に、部の生徒を自宅に預かり暮らしてきました。しかし、長年の坂道の行き来で陽子さんが足を悪くしてしまいます。そこで信行さんは教師を辞め、生徒を預かる暮らしにも終止符を打ちました。
陽子さんの足が良くなると、生徒たちが生活した家を自分たちの手で改装。ゆっくり何かしたいと、予約制のカフェを始めることにしたご夫婦。現在、オープン間もないのに多くのお客さんでにぎわうお店。その大半は教え子たちです!そしてこの春、最後の教え子が高校を卒業していきました。「皆がいつでも帰って来られる店にしたい」と言うご夫婦。理想のカフェ目指して頑張って下さい!
「Nobucafe」の看板メニューは、陽子さんの作る日替わりランチです。その日の食材によって考えるメニューは、温かいお袋の味。
ある日のメニューはおから炒めと港町・佐世保ならでは、新鮮なサヨリのお刺身など5種類のおかず。そして、必ずついてくるのがホカホカ炊きたてのご飯をにぎった大きなおむすび!これ、陽子さんが大好きだからなんですって!!
ギャラリーにもなっている店内。革製品や押し花アートなど、櫻井家の家族が作った様々な手作り品が並べられているんです。その中でも一際目立つのが、信行さんの趣味の木工作品。釣り好きで、かつては魚をモチーフにしたものばかり作ってきた信行さん。でも「もっと実用性のあるものを」という陽子さんのアドバイスで、今はスプーンやフォークなど食器類を中心に制作しています。
ある日。日替わりランチのおかずも揃い、さあおむすびを作ってお客さんの元へ、と思ったら・・・なんと肝心のご飯を炊き忘れていたことに気付いたご夫婦。
信行さんがすかさずお客さんに謝って、ご飯が炊きあがるまでしばし待ってもらうことになりました。オープン間もないお店だけにこんな失敗はつきもの。取材スタッフも思わずびっくりの出来事でした。
何かと教え子に助けられている「Nobu cafe」。
信行さんの教え子で、元バレー部員・吉福祥子さんもそんな存在です。山間部で地域の特産品を売る「おがわの里」を営んでいます。このお店、とってもユニーク。お店の前に畑があって欲しい野菜を引っこ抜いて買うんです。
陽子さんは先に商売を始めた先輩としても、祥子さんを頼りにしています。
お店の定休日。この日は、夫婦で信行さんの大好きな釣りに出かけました。釣り糸を垂れるは、国立公園にも指定されている九十九島の中の一島。
釣果は少なかったが、大自然の中で夫婦仲良く弁当をほおばればそれで充分。結婚してすぐ、生徒たちを預かり大人数で暮らしてきたご夫婦です。今やっと、二人きりの時間を楽しめるようになって“新婚気分”を味わっているそうです。
信行さんが35年間教員を勤めた「聖和女子学院高等学校」卒業式の日。この日卒業したのは、信行さんが退職する直前まで教えていた最後の生徒です。
式の後、卒業生のバレーボール部員7名がご夫婦の元を訪れました。お二人に感謝の気持ちを伝えに来てくれたんです。思い出話に花を咲かせ、元気に巣立って行きました。今度はお客さんとして帰って来る事を楽しみに待つお二人です。
信行さんが、7名のバレー部員のために用意していた記念品があります。
大好きな魚をモチーフにした、手作りの木工マグネット。可愛らしいフグやヒラメなどの絵と共に記したのは“技は心なり”の文字。
これは信行さんが、バレーボールの練習の度に繰り返し生徒さんに伝えてきた大好きな言葉なんだそうです。