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2023年3月18日(土)

あらすじ

 奈津(檀れい)と夫婦となり、念願の温泉旅行へとやってきた半兵衛(水谷豊)。夫婦ふたり、いい雰囲気になったかと思いきや、勝谷(岸部一徳)や息子の新太郎(田中偉登)一家に邪魔をされ…。欲を捨てるとは言い続けてきたが、いくらなんでも…。さすがの半兵衛もがっくりと肩を落とす。

 そんな中、江戸では付け火事件が続発していた。火災現場には『天誅 松平定信』という不穏な書き置きも。世間では飢饉が続き、土地を手放す小作人が増えるなど貧富の格差が拡大。大地主は豪農となる一方、まともに米を口にできない農民たちによる打ち壊しも頻繁に起きていた。そんな恨みが老中・定信(杉本哲太)に向けられての付け火か?江戸の庶民から厳しい目を向けられていた定信だが、幕府でもかつて定信に失脚させられながら復権を狙う水野忠友(山下禎啓)が定信の危機にほくそ笑んでいた。

 半兵衛が火付けの犯人探しに似顔絵書き協力する一方、新太郎は新たな上司となる書院番士に定信の息子・定行(矢野聖人)を迎えていた。書院番士は単なる通過点、将来は老中に、と出世欲むき出しの定行に書院番たちは戸惑うばかりだが、やたらとゴマをする高木宗八郎(まいど豊)は歓迎の会を計画。新太郎は高木に命じられ、会場探しから、はては吉原のお供までやらされてしまう。

 その吉原で定行は遊女・おりん(柳ゆり菜)にぞっこんとなってしまう。おりん目当てで吉原に通うようになった定行に新太郎は毎度お供の役目を。子を持ち、父親としての責任を果たすには出世も必要。新太郎は困惑しながらも黙って責務を果たしていた。

 そんな折、珍しく血相を変えた勝谷が半兵衛のもとへ駆け込んできた。なんと吉原で遊女にのぼせ上がった新太郎が部屋に斬り込み、武士に怪我を負わせたという。そして新太郎には切腹の命が下ったとも。新太郎がそんなことをするはずがない!半兵衛は新太郎に斬られたという小早川(温水洋一)を訪ね、事情を聞くのだが…。

出演者コメント

水谷豊 コメント

――1年ぶりの『無用庵』の撮影ですが、感想は?
「昇進しか頭にない人たちばかりの社会がいやになった半兵衛が隠居修行を始めるドラマですが、欲を捨てたいと思いながら捨てきれない。そんな悩ましい気持ちを今回もまた存分に発揮しましたね(笑)。それは楽しかったです。おそらくそんな半兵衛と同じ気持ちを抱えてらっしゃる方は多いのではないでしょうか。今回も半兵衛がまた健在でした」

――改めて人気シリーズとなった『無用庵』の魅力はどこにあると思いますか?
「武家社会と庶民の生活、この2つを必ず毎回描いていること。そして、権力を正しく使おうとする者と、権力を悪用する者が必ず出てくるんです。これらのバランスが絶妙だと思います」

――今回はこれまでにない3人の姿が見られるシーンもあります。そこで改めて3人の絆がクローズアップされるかと思いますが、いかがでしょうか?
「シリーズが始まったときに(吉川)監督がいくら侍でも家の中ではそんなにきちっとしゃべっていないだろうし、だらしない座り方をしているときもあったんじゃないか、とおっしゃったんですが、それが演じる我々にはヒントになったんです。3人の会話劇がとても面白くなったのは、そういうところからだったんですね。それを続けているうちにだんだん3人の世界が出来上がりましたが、今回は半兵衛が土下座をしようとしたら勝谷が止めて、本当に半兵衛が困ったときに奈津は吉原に乗り込んで…と。普段は面白おかしくやっている3人ですが、心の底には愛があるんだなと、2人の愛情を感じましたね。
ただ、岸部一徳さんに僕が上から目線でものを言うなどということは、プライベートでは絶対にないわけです(笑)。だからこのドラマでやりたい放題やろうと思ったんですけど、気がつくと勝谷にコントロールされているなと感じることがありますね(笑)。それがまた面白いところなんですね」

――様々な騒動を乗り越えて半兵衛と奈津の距離もグッと近づいたように思いますが?
「今回2人でやっと念願の温泉旅行が出来るんですが、なぜか家族みーんな来ていたんですね(笑)。がっかりしましたね。それにしても本当によくまぁこうやって面白おかしく作ってくれるなと思って。役者として、やりたくてなかなかやれないのがちょっとしたコメディ、ちょっとしたユーモアを表現するということ。でも、今回それが出来たというのは役者冥利に尽きるなと思いました。そういうシーンが今回はたくさんありましたね」

――吉川監督の演出や京都のスタッフと仕事をされて時代劇の魅力など改めて感じることは?
「京都にお邪魔するのは『だましゑ歌麿』から数えて10本になるんですが、吉川監督の吉川ワールドを実感しています。監督がどこへ行こうとしているんだろうと、まず我々は知ろうとするんですが、必ず面白い世界へ行こうとしているんです。そこへ向かって撮影、照明、録音、美術、衣装にいたるまでスタッフの皆さんがみごとな仕事をしている。本当にいい世界で仕事させてもらっていると毎回感じています」

岸部一徳 コメント

――1年ぶりの撮影について感想は?
「欲が捨てきれない半兵衛に私は『欲を早く捨ててください』と言っているんですけど、なかなか捨ててくれない(笑)。そんなドラマを毎年やってきましたが、単に積み重ねてきたのではなく、毎年毎年何かが進化していっているような気がするんです。人間関係も含めて。それがすごく俳優として幸せな時間だなというのが感想です」

――6作も続く人気シリーズとなりましたが、ドラマの魅力はどこにあると思われますか?
「時代劇のホームドラマという感じもするんですが、映画、テレビを含めて日常をこんなふうに、本当の日常として描く時代劇というのは他にないように思うんです。それがやっていくうちになかなか面白いもんだな、と感じるようになってきた。平和な時代と今の時代にはない、人間関係の豊かさみたいなものも少し感じたりしています」

――今回は勝谷が珍しく怒りを露わにするシーンもありますが…。
「勝谷が本気で怒るシーンですが、『ま、やるときはやるぞ』ということですね(笑)。ただ、私は半兵衛の用人役なんですが、上下関係を超えた会話が時々出てくるんですね。どっちが偉いんだ?みたいな(笑)。そこがすごく楽しいなと思ったりもします」

――吉川監督の演出、京都での時代劇の撮影について改めて感じることは?
「吉川監督にはいろいろと教えていただいています。それも大事なことを何気ないところで教えていただける、そういう現場なんですね。だからそれがすごく楽しいです。ただ単にみんな仲良くというだけではない現場なので、それが本当に充実した感じになっています。毎年そういうことを感じながらやっていて、もうわかった、これで良しということもないんです。今回のシリーズでもまた新しい何かを見せてもらえるというか。そこが本当に尊敬できる監督ですね」

檀れい コメント

――1年ぶりの撮影になりますが、ご感想を。
「1作目では、半兵衛様は無用庵で1人だったんですけど、回を重ねるごとに欲もチラチラ見えてきまして、毎回毎回追いかけていた奈津は、前作の最後で半兵衛様と夫婦になり、この6作目ではその続きから始まります。半兵衛様の周りにも家族が増えている感じですね。今回の「無用庵」もとても楽しい仕上がりだなと思っています」

――『無用庵』というドラマの魅力はどこにあると思われますか?
「時代劇というと演じる側としても少し堅苦しいかな、所作とかちゃんとうまく出来るかなという、ある種、現代劇よりも難しさを感じるんです。でも、この「無用庵」に関してはもちろん見せるところはきちんと所作も見せますけれど、肩の力がふっと抜けたような日々の生活を表現している。その中にも半兵衛様と勝谷さんのやりとりがクスッと笑えたり、人間のおかしさみたいなものが随所に散りばめられているんです。そういうところが魅力の一つとして多くの方から愛されているのかなと感じます」

――今回は奈津が少々大胆な行動に出ますが…。
「今まで半兵衛様のために動くことがあったんですけど、今回は息子の新太郎のために動きます。でもその先には“半兵衛様のために”という思いがあるので…。今回の6作目はお転婆が少し過ぎますね(笑)」

――いろいろな騒動を乗り越えてきて半兵衛と奈津の距離は縮まったと思いますが?
「ぐっと縮まりましたし、最初から温泉旅行のシーンから始まるので台本をいただいた時に夜中に1人で大笑いしながら読んでしまいました(笑)。でも、台本で想像していた以上に現場は面白くて、スタッフの皆さんもニヤニヤしながら、笑いながら撮影していらっしゃった感じで(笑)。私も笑いをこらえるのが大変なぐらい楽しいシーンになりました」

――吉川監督の演出や京都で時代劇を撮影されての感想をお聞かせください。
「初めて吉川監督とお仕事をさせていただいたのが、この『無用庵』の1作目だったんですが、本当に現場に入ってみないとどういう演出になるか読めませんでした。こういうことをやるんだ、こういうお芝居をしていくんだと、吉川監督が頭の中で描いている絵に驚かされながら、毎回撮影していたという感じでした。今年で6本目ですが、今回も『今日はどんな撮影になるんだろう?』とワクワクしながらの撮影でした。やはり京都で撮影というと、時代劇の専門のスタッフさんが皆さん素晴らしくて、着物の着方から所作、セットの作り、光、いろいろな部分で私たちを助けてくださって本当に有り難いです。一緒に作品を作っているということを日々感じながらやっていましたので、また皆さんと一緒にやりたいと思いながら、毎年この『無用庵』の撮影に臨んできました」

出演者

水谷 豊 檀 れい 田山涼成 中山 忍 佐藤B作 橋爪 淳
市毛良枝 山中崇史 田中偉登 松風理咲 榎木孝明
温水洋一 矢野聖人 柳ゆり菜 小川菜摘 黒川智花 まいど豊 ミスターちん 山口良一 冨家規政 永井 大
杉本哲太 岸部一徳

ナレーション:夏木マリ

スタッフ

原作:海老沢泰久「無用庵隠居修行」(文春文庫)
監督:吉川一義
脚本:土橋章宏
制作:テレビ朝日・BS朝日・松竹株式会社