2007年8月24日
4日間の世界競泳が、幕を閉じました。
最終日もスタンドは、満員!大きな歓声の中、会場がひとつになって、最高の盛り上がりでした。
そんな中、最終日は、国の総合力を競う男女のメドレーリレーをはじめ、800m自由形にアテネ五輪金メダリストの柴田亜衣選手、男子100mバタフライには大ベテランのミスターバタフライ山本貴司選手が登場しました。
連日のメダルラッシュの勢いそのままに、最終日も選手たちの笑顔が弾けましたね!
アテネ五輪金メダル以降、思い通りのレースができず、悩んでいた柴田亜衣選手が、3年ぶりに自己ベストタイムを更新し金メダル!
「もう一度、世界と戦いたい!」その熱い想いから復帰した山本貴司選手。来年の北京五輪へ向け、100mバタフライで、完全復活の金メダルに輝きました!
800m自由形で銀メダルを獲得し、柴田亜衣選手とワン・ツーフィニッシュを成し遂げたのが、矢野友理江選手!大会2日目、得意の200mバタフライで、フライングで失格となり、相当なショックを受けたはずです。そんな中で、気持ちを切り替えて、頑張りました。200m個人メドレーでも、高桑健選手が、粘りの泳ぎを見せて、見事、銅メダルを獲得!
そして最終種目となったのが、男女4×100mメドレーリレー!
男子チームは、日本新記録を樹立しての金メダル!女子チームは、日本新記録樹立&世界大会7年ぶりのメダルとなる銅メダル獲得となりました。大幅に記録を更新できたことは、来年の北京五輪に向けて、チームの意識も大きく変化したことでしょう!
さて・・・最終日は、柴田亜衣選手の笑顔が印象的でした。世界競泳前、彼女は、「ベストタイムを出したい!」と力強く宣言!
しかし初日に行われた400m自由形で、思ったような泳ぎができず4位に・・・。相当なショックを受けたはずです。ベストタイムを更新できないまま、彼女の世界競泳が終わってしまうのか・・・きっと彼女も不安な気持ちでいっぱいだったでしょう。
その二日後、彼女は、800m自由形のスタート台へ。そのとき彼女は、アテネ五輪のスタート前に見せた、自信に溢れる引き締まった表情をしていました。
400m自由形でのショックを、二日間で、しっかりと修正し、気持ちを切り替えることができたのです。短い時間の中で、気持ちを切り替えることは、本当に難しいことです。普通なら、初めの種目で落ち込んでしまったら、ズルズルと引きずり、軌道修正をすることができません。
しかし彼女は、違いました。北京五輪を1年後に控え、自分自身がこの世界競泳で達成しなければならない目標をもう一度、見つめ直したのだと思います。
自分自身と向き合い、自分の弱さを知ることで、本当の強さを得ることができたのだと。
苦しさの中から這い上がって手にした3年ぶりの自己ベストタイムは、彼女にとって、大きな自信となったはずです。アテネ五輪後、止まっていた彼女の時計は、また元気よく動き出しました。
逆境の中で、手にした自信。この自信は、必ず1年後、北京五輪の舞台で大きな力になると、私は信じています。
最後に、今大会の課題をひとつ挙げるとしたら、日本チームの目標でもあった自己ベストタイムを更新する率「自己ベスト率」が、低かったこと。やはり世界のレベルも上がっている中で、個々の自己ベストタイムも上げていかなければ、世界と戦うことができません。北京五輪の1年前に見つかったそれぞれの課題を大切に、来年へ向かってほしいです。
今回の世界競泳は、ベテランと若手選手たちが世界の舞台で戦いました。
世界大会で何度も戦ってきたベテラン選手と一緒に生活や試合を共にしたことで、若手選手たちにとって、今後に繋がる素晴らしい経験になったと思います。この経験を最大限に生かして、これからもっともっと世界舞台へ羽ばたいてほしいです。
この世界競泳では、選手の皆さんの一生懸命の一瞬一瞬に立ち会えたこと・・・本当に幸せでした。日本チームの皆さん、素敵な笑顔、熱い泳ぎをありがとうございました。
そして応援して下さった皆さん、4日間、たくさんのご声援をありがとうございました。
これからも日本競泳チームは、世界一を目指して、戦っていきます。
一生懸命な選手たちへのご声援をよろしくお願いします!
萩原智子/Tomoko Hagiwara
1980年、大阪府生まれ、山梨育ち。
2000年シドニー五輪200m背泳ぎ4位入賞。2003年日本選手権では、100m、200m自由形、200m背泳ぎ、200m個人メドレーで史上初の4冠達成。「ハギトモ」の愛称で親しまれ、現在でも100m自由形、200m個人メドレーの日本記録を保持しているオールラウンドスイマー。
現在は、山梨学院カレッジスポーツセンター研究員、財団法人日本オリンピック委員会アスリート委員、女性アスリート専門委員、財団法人日本水泳連盟強化委員、日本アンチ・ドーピング機構広報委員、株式会社アシックス アドバイザー、上越市スポーツアドバイザー、高知県宿毛市宿毛大使を務めている傍ら、水泳解説や水泳指導のため、全国を駆け回る日々を続けている。
その活動の様子は、ブログ「萩原智子のいつも笑顔で」でチェック!