障がい者福祉

NAKANO街中まるごと美術館!
アール・ブリュット ―人の無限の創造力を探求する2021―

 東京・中野の4つの大型商店街をはじめ、地域一帯をオープンな美術館に見立てて、近年、世界的に注目されている「アール・ブリュット」と呼ばれる優れた芸術作品を紹介するイベント、「NAKANO街中まるごと美術館! アール・ブリュット ―人の無限の創造力を探求する2021―」を、1月23日から2月23日まで開催しました。

◆アール・ブリュットとは◆
 専門的な美術教育を受けていない人々が、独自の方法や発想で生み出す芸術作品を指します。フランスの現代芸術家ジャン・デュビュッフェが1945年に提唱した概念で、アール(ART)は「芸術」、ブリュット(BRUT)は「磨かれていない/加工していない/生のままの」という意味のフランス語。「生(き)の芸術」とも呼ばれています。既存の手法や従来の美術の価値観にこだわらない、極めて革新的・独創的な美的感覚をもつのが特徴で、作家には障がいがある作り手、美術とは全く離れた位置にある市井の作り手も含まれます。
 近年、日本でもこうした作品が見出され、その圧倒的な独自性や存在感、豊潤で自由なイメージ、驚異的な技術のレベルなどが賞賛を受け、メディアや映画などで紹介される機会も増えています。2018年9月から2019年3月にかけては、海外での本格的な展覧会「アール・ブリュット・ジャポネⅡ」がパリ東京文化タンデム2018の一環としてフランスで開催され、日本の作家52組、約640点の作品が一挙に紹介されました。また、米国のギャラリーなどで個展が開かれる作家も出てきており、国内外から注目を集めています。

 このイベントは、社会福祉法人愛成会(東京・中野区)が、中野ブロードウェイ商店街振興組合、中野サンモール商店街振興組合など、区内の商店街や企業と協働して2010年から毎年開催しているものです。「まち」「文化芸術」「福祉」が三位一体となり、生活の基盤である街を活用して人々の日常にアール・ブリュット作品を溶け込ませ、作品を通して多様性に気づき受けいれる「ひとづくり」「まちづくり」へ繋げることを目的としています。テレビ朝日福祉文化事業団は、今回愛成会や各商店街とともに本イベントを主催する実行委員会の一員として取り組みました。

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◆中野サンモール商店街「空中ギャラリー」

 JR中央・総武線と地下鉄東西線が乗り入れる中野駅は毎日16万人が乗降する都内でも中核の駅です。その中野駅北口の改札を出て一直線に伸びる中野サンモール商店街は、一日平均5万人が行き交うメインストリート。アーケードでは、高い天井から縦1.8m、横3mの大きな作品のバナーを吊るした「空中ギャラリー」が展開し、裏表で計12作家の作品が多くの買い物客や通行人の目を楽しませていました。

 作品と一緒にクイズを記したバナーも。今回は関連イベントとして、会場となった各商店街にちなんだクイズをバナーで出題し、3問以上正解した方には、アール・ブリュットのオリジナルトートバッグをプレゼントするクイズラリーを企画、実施しました。  

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◆中野ブロードウェイ商店街「階段ギャラリー」

 サンモール商店街からそのまま続く、アニメ・サブカルチャー文化で有名な中野の巨大ショッピングセンター、中野ブロードウェイ商店街。建物内の北、中央、南と全部で3か所ある階段の1階から4階までの踊り場を含めた壁面を使う「階段ギャラリー」に、42点の作品をポスターで紹介しました。

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◆南口の「看板ギャラリー」と「坂道ギャラリー」

 続いて中野駅の南口にまわります。南口ロータリーから南に伸びる中野南口駅前商店街。各店舗の看板を使用した「看板ギャラリー」で、全22作家の作品をバナーで紹介しました。
 また、赤褐色のレンガが敷き詰められた中野レンガ坂商店会では、8作家の作品バナーを設置。この商店街に隣接する中野マルイ2階の展示スペース「隠れ家ギャラリー」には12点の作品ポスターを展示しました。

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◆アール・ブリュット展

 このほかに期間限定で、なかのZERO本館の展示ギャラリーにて「アール・ブリュット展『日常にあふれる想い』」と題した展覧会も開催しました。

 コピー用紙とセロハンテープから成るカラフルな立体人形を作り出す石野敬祐さん。布と糸を使用し、玉留めから美しい刺繍の作品を創作する吉本篤史さん。チラシなどの紙に1㎜にも満たない細さでクルクルと螺旋状にハサミで切り込みを入れる藤岡祐機さん。描かれたモノの細胞までもを想像させる佐々木省伍さんなど、作家9名の「日常」から生みだされた作品を展示し、お客様にご覧いただきました。
 また中野ブロードウェイ商店街の店舗でも、地元中野のアーティストの実物の作品を展示しました。

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 東京都に新型コロナウイルス感染症拡大防止のため緊急事態宣言が発令された中での展覧会開催となりましたが、会場に足を運んでくださいました皆様にはマスク着用はじめ入場時の検温、手指の消毒や人数制限を設けるなど感染防止にご協力いただきました。
 当事業団としては、一人でも多くの人がこうした作品に接し、その魅力と価値を知り、そこから障がいがある人を取り巻く環境や問題を考えるきっかけとなることを願っています。また同時に、一人でも多くの人が創作活動の機会を得て、発表し、正当に評価される場がもてるよう、引き続き支援をしていく方針です。

日時:2021年1月23日から2月23日まで
場所:中野ブロードウェイ商店街、なかのZERO本館展示ギャラリーほか
主催:NAKANO街中まるごと美術館実行委員会
主要団体:中野ブロードウェイ商店街振興組合、中野サンモール商店街振興組合、(福)愛成会、(福)テレビ朝日福祉文化事業団
協力団体:中野南口駅前商店街、中野レンガ坂商店会、野方商店街振興組合
協賛:中野区
協力:中野マルイ、もみじ山共栄千光会、三井住友信託銀行中野支店ほか
後援:中野区商店街連合会

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