「自分の手と足だけで登り切るっていうのが僕の理想なんですね。」
２度のワールドカップ優勝や、数々の登頂記録の達成など、
世界的に有名なプロフリークライマー・平山ユージ。
そんな彼を頂点に導いたのは一つの大きな挑戦でした。

１５歳からクライミングを始めた彼はすぐに頭角を現し、１９歳で本場ヨーロッパに渡り、
日本人初のプロとしてワールドカップや世界選手権に参戦。
しかし…プロになって５〜６年。それなりに好成績は残すものの
トップにだけはどうしても手が届きませんでした。
「勝てるだけの能力が無いんじゃないかと、出来ないんだったら続けていてもなって…」

引退を考え始めた彼は、自分の限界に挑戦するため、
昔から憧れていたある岩山へのアタックを決意します。
“エルキャピタン”。
当時、世界最難関と言われていた１，１００ｍに及ぶ一枚岩の巨大な壁です。
エルキャピタンに登るため、彼は２年間にわたり文字通り血の
にじむような努力を続けます。

１９９７年９月。人生の全てを賭けた難攻不落の岩壁への挑戦が始まります。
彼は２日間に渡り、己の限界を越えたクライミングを続けます。
そしてついに…３８時間、当時の世界最速記録で完登を果たします。
そしてその翌年、決意も新たに挑んだワールドカップでは
見事初めての年間総合優勝に輝き、名実ともに世界一のフリークライマーとなったのです。

「経験したこともないような世界に飛び込みたいんで、その為には自分が進化していかなきゃいけないと…」
彼は未知なる世界を求め、今日も挑戦を続けています。