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フィギュアスケートグランプリファイナル −その実況の真相とは−

  Reported by 宇佐 美佑果
 


森下桂吉アナウンサー

角澤照治アナウンサー

清水俊輔アナウンサー

この3人のアナウンサーの共通点、何かわかりますか?

そうなのです!
実はこの3人、今週12月7日(金)から12月9日(日)まで行われる、フィギュアスケートグランプリファイナルの実況アナウンサー達なのです!

少し前に、同期の久冨が『実況アナウンサー特集』について書きましたが、私も彼女と同じく、最近実況の奥深さに魅せられていました。

先日、私は全日本大学駅伝の事前取材を手伝わせて頂きました。そこで、一つの実況を成り立たせる為に、いかに多くの人間が関わり、資料の準備や取材に沢山の時間、労力、そして熱意を掛けているか、という事を、身を持って実感しました。

駅伝の準備は大人数で長い期間をかけて行われましたが、他にもサッカー、野球、ゴルフ、プロレス等、様々なスポーツがある中で、私はよく実況アナウンサー達が夜遅くまで一人で資料を作っている姿を見ています。
そこで、こう思わずにはいられませんでした。


スポーツの種目によって、
実況やその準備の仕方は変わるのか?


その真相を探るにあたり、全ての競技について聞くと収拾がつかないと思い、
今回は、今週行われるフィギュアスケートGPファイナルの実況に焦点を絞りました。
GPファイナルとは、世界各国で、6戦にわたり行われてきたGPシリーズを勝ち抜いた上位6人による、世界一決定戦です!
今年は、過去最多の女子2人男子4人計6人の日本人選手が出場します!

フィギュアスケートの世界最高峰の戦いへの準備や実況方法は、他のスポーツと違うのか?
気になります!

そこで、フィギュアスケートの実況を7年間担当されてきた、森下アナウンサー、角澤アナウンサー、清水アナウンサーの3人に、疑問に思った3つの事をぶつけてみました!



【宇佐美の実況への疑問TOP3】


−準備編−

【疑問@: 試合を見る時に、どういう点を重点的に見ているか?】



森下アナ

見た自分がどう感じるかを心に刻んでいるだけです。



角澤アナ

演技の内容は勿論ですが、選手の表情は細かく見るようにしています。


さらに、角澤さんは、選手の表情を細かく見て、その表情の意味合い、喜怒哀楽を感じ取り、選手がどう感じているかを見るようにしているとおっしゃっていました。



清水アナ

細かい部分を見ながらも、全体の印象を自分で感じることを忘れないようにする。


お気付きでしょうか?

実は、取材をした3人のコメント全てに「感じる事」の大切さという事が含まれていました。特に、森下アナウンサーと清水アナウンサーは、資料をノートに「書き込む」というよりも「心で感じた事を覚えておく」というニュアンスが、コメントからは伝わってきました。この特徴は、フィギュアならではだと思いました。 他のスポーツの種目と違い、「競う」と同時に、バレエやミュージカルと同じように「魅せる」事が求められるフィギュアだからこそ、「感じる事の大切さ」が試合を見る上で大事なのだ、という事を改めて感じました。


−試合当日編−

【疑問A: 試合当日、試合前のルーティーン、実況の前に必ずやる事はありますか?】
≪この質問の意図:スポーツ選手が試合前にリラックスをしたり集中力を高めたりする為に必ずやる事を作る人がいる様に、実況前のアナウンサーも、心を落ち着かせる為にやる事があるのか?という疑問を抱きました。≫



森下アナ

放送席からもっとも近い喫煙所を事前にチェックしておき、そこで一服。



角澤アナ

気分がすっきりするので、30分前に歯を磨きます。それとフィギュアの会場は少し寒い事があるので、トイレに行きたくならないよう、直前の水分は控えめにしています。


私も一度フィギュアの中継のお手伝いをした事があるのですが、本当に寒かったです!
水分を控えめにする所まで気を遣っているんですね。



清水アナ

ありません。決まり事を作ると、それが出来なかった時に不安になってしまうので。僕にとっては、決まり事こそ自分を縛るものなのです。


やはりこれは人それぞれなのだな、と感じました。森下アナウンサーと角澤アナウンサーが決まった行動を取るのに対し、清水アナウンサーが決まり事を作らない、というのが印象的でした。


【疑問B: フィギュアスケートの実況が、他のスポーツの種目と違う所はありますか?
また、フィギュアの実況をする時に、特に心掛けている事はありますか?】



森下アナ

しゃべらないことを前提とした上でしゃべる。普段はしゃべることを前提とした上で黙る。


初めは、森下アナウンサーのコメントの意味がよく理解出来ませんでした。しかし、取材を続けたところ、その意味がようやくわかり、実況の奥深さというものを実感しました。


実は以前、「フィギュアスケートグランプリシリーズ2009 オフィシャルガイドブック」(朝日新聞出版)という本で、森下アナウンサーはこんな事をおっしゃっていました。



森下アナ

・・・実況するのが僕らの仕事なので、“実況があると、より面白い!”と感じていただく事が、永遠のテーマですね。選手が今抱えている問題や、ちょっとしたルールなどが分かれば、観ていてより面白くなるのでは?そういった、視聴者にとってプラスになるような実況をしたい。何をどう喋るのか、どう黙るのか、今でも手さぐり状態です。


それを聞いてからの角澤アナウンサーの答えは、凄く理解出来るものでした。



角澤アナ

実況がなくても見ている人によっては、成立してしまう競技なので、その上で、視聴者の方の邪魔にならない実況をするというのは、正解のない奥深さがあります。


さらに、清水アナウンサーにも聞いてみたところ、



清水アナ

1) 競技性と芸術性の両立・音楽との調和 (選手みたいでおこがましいですが・・・)
例えば、「この選手は、次のジャンプは前回も前々回もミスをしている」ということは、競技的な観点からの情報としては言わなければいけないです。スポーツ中継なので。
でも、そういう競技的な情報ばかりでは、フィギュアの良さを消してしまう。
そういう意味で、競技性と芸術性の両立が必要です。

2) 実況中、よ〜〜〜く音楽を聴く
明るいアップテンポの曲なのか、クラシックの静かな曲なのか。
普段音楽を聴いているときでも、曲によって気持ちは違うと思います。
気持ちが違えば、出てくる声のトーンは違いますよね?
それが音楽との調和だと思います。
音楽を聴いて自然とその曲の雰囲気に乗って喋る。
これは特に気を付けています。


とおっしゃっていました。
フィギュアスケートの良さを出すには、音楽をよく聞き、自分もその世界観に浸り、入り込む事が本当に大切なんだなぁ・・・と感じます。入り込んでこそ、最高のタイミングで「その瞬間に感じた事」を言えるのだと思いました。でもスポーツ中継という面を持つという難しさ。本当に奥深いです。

今回取材をした3人のアナウンサーは、いずれも言い方に少し違いがあっても、フィギュアスケートの実況について共通の事をおっしゃっている気がします。
それは、

フィギュアスケートは「競う」と同時に
「魅せる」競技でもある為、それだけ「感じる」事が大事であり、それを表現する術が難しいものである。

という事だと私は感じました。

こういう事を知った上で聞く実況も、また違うのではないでしょうか?

今週行われるフィギュアスケートGPファイナル、是非ご覧になってみて下さい!


フィギュアスケートGPファイナル

★女子ショートほか 12月7日(金)夜8時〜(一部地域除く)

★女子フリー・男子ショート 12月8日(土) 夜6時30分〜

★男子フリー 12月8日(土)夜11時36分〜

★エキシビション 12月9日(日)夜11時15分〜

 

このコーナーのバックナンバーはこちらから
 
<このコーナーは清水俊輔と、 3年目の菅原知弘寺川俊平森葉子と、
2年目の斎藤康貴青山愛 と、
1年目の宇佐美佑果久冨慶子が担当しています。
 
    
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