猿弥:歌舞伎の世界は世襲制で門閥の世界なんです。代々の歌舞伎の家柄で形成されている一門がほとんどなんですが、そのなかで例外的に、市川猿之助一門は親が役者ではない人たちも積極的に取り入れているんです。
古澤:猿弥さんご自身もお父様は役者さんじゃありませんよね。
猿弥:ええ、うちは製本業をやってました。三歳の頃に児童劇団で演劇を始めたんですが、歌舞伎の音羽グループという歌舞伎の子役の集団に見出されて、小学校低学年の時に歌舞伎の舞台に出るようになったんですよ。そうして猿之助師匠のところに入門したんです。
古澤:猿之助一門と言うのは他の歌舞伎の一門とはちょっと違うんですね。
猿弥:そうですね。弟子の中から大抜擢して役を与えたりしますからね。入門したての弟子に台詞のある役をつけたりとか、他の一門では決してやらないことをやっているんです。歌舞伎役者というのはみんな松竹所属なんで、その松竹の考え方といつも闘いながらやっていますよ。
古澤:役者さんが松竹所属のタレントさんだったとは知りませんでした。猿之助さんというとスーパー歌舞伎で有名ですね。
猿弥:もともと古典歌舞伎と言うのは伝統のものですから、テンポがゆったりしていることもあり、観客が眠ってしまうこともしばしばなんですね。そこで、猿之助師匠は、オペラや様々な演劇様式からアイディアを得て、邦楽以外のものを入れてみたりして工夫をして、よりエンターテイメント的にしているんです。全体のテンポも変えたり、宙乗りなんていう外連(けれん)もたくさん入れてね。(注:外連とは演劇用語で見た目を狙った演出で、早替わり、宙乗り、水芸などをさす)
古澤:スーパー歌舞伎は本当にダイナミックで面白いですね。僕はスーパー歌舞伎から入門して、と言っても、今だにスーパー歌舞伎しか見ていないんですが・・・(笑い)、もうすっかり虜になっていますよ。「ヤマトタケル」「新三国志」とか、何度でも観たいと思いますね。いつも、スーパー歌舞伎は新橋演舞場で演じられていますよね。
猿弥:古典歌舞伎は歌舞伎座で、スーパー歌舞伎は新橋演舞場で行うんですよ。新橋演舞場は、回り舞台や宙乗りの演出が多いスーパー歌舞伎を上演するのにはとても適しているんです。古典歌舞伎とスーパー歌舞伎は違いますから、二つとも見ることを勧めますよ。
古澤:そんなに違いますか・・・・実は、僕はワイドスクランブルと言う番組の企画で、4年程前、歌舞伎に挑戦をさせていただいたんですね。顔に隈取をして、歌舞伎の衣装を着て、花道をすり足のような感じで歩き、なんと、みえまで切らせていただいたんですよ。それからもうすっかり歌舞伎にはまってしまいました。でも実はまだ古典歌舞伎を楽しむところまではいっていないんですね。どうすれば古典歌舞伎をより楽しく観る事ができるんでしょうか。
猿弥:古典歌舞伎を見に行く時は、あらすじを知ってから行くといいですね。面白いストーリーの芝居から入るのがコツですね。最初に、「この先どうなるんだろう」って思いながら観られると、すうっと引き込まれると思いますよ。
または贔屓(ひいき)の役者をつくることですね。その役者さんを見に行く事です。
古澤:贔屓の役者さんとして僕たちは猿弥さんを見に行こうと思えばいいわけですね。
猿弥:右近さんとか、笑也さんとか、段治郎くんとか、贔屓の役者さんを作ってみることですね。皆さんそれぞれ魅力ある役者さんですよ。
宮嶋:
市川猿弥さんのお話はここから歌舞伎役者の稽古の話、歌舞伎界の昇進システムの話、色々と広がっていきました。アナウンサーたちからも質問が飛び出しました。 |