仏像が見たくなった。
じゃあ、古都にでも行ってみるか。
そんなことで始まったひとり旅。
言っておくがわたしはそんなに行動力のあるタイプではない。
旅行のガイドブックを見ていると行った気になって満足する。
荷造りをしているだけで旅の疲れが襲ってくる。
世間は秋の三連休。
わざわざ窓側の席を取ったのに、やっぱり富士山を見る前に寝入ってしまった。
まもなく京都、というアナウンスを聞いて慌てて駅に降り立った。 |
京都雑感 |
関西に親戚はいない。
でもいつも関西(ことに京都は)へくるたびに「帰ってきた」と思う。
前世は公家?…そんな高貴な雰囲気は私のどこを探しても見当たらない。
この旅で決めたこと。
歩きながら音楽を聴かない。その街角の音を聴こう。
出来るだけ歩く。目的地までの道も楽しみたいから。
さぁ旅の始まりだ。
まずどこへいこう?友人がいつか話していた「口から念仏が出ている像」が見たい。
それは空也上人像である。
ということでまずは京都・六波羅蜜寺からスタートだ。
っ!…いたいた!!!
哀しげなのに寛大にすら感じる表情が堪らない…。 |
空也上人 |
念仏を唱える上人の口からは本当に南無阿弥陀仏を表す仏像が出ている。
わたしが像にされたら何が出てくるんだろう?
苦手な「ら・り・る・れ・ろ」かも知れない。
どこか不気味な空気すら漂う六波羅蜜寺。
早くも心が高鳴った。
空也上人のとなりのとなりにはなんとあの平清盛像まで!
小さなお寺の中のわりと質素な建物の中に
教科書で見たお方たちのオンパレードなのである。
住職が団体客に向けて話す中に紛れ込んで佇んだ。
見知らぬ人が「すごいねぇ」と話しかける
「ねぇー。」と一緒に嘆息…
これも一人旅の魅力のひとつなのだろうか。
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八坂さん |
六波羅蜜寺から八坂さんまで歩いた。
三十三間堂は開館時間ギリギリですべり込んだ。
何度も来たことがあるけど、清水寺の夕暮れ時は初めて見た。
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三十三間堂 |
行く先々でしびれる光景に出会う。
いつもなら見落としそうな一瞬を
いつもなら聞きこぼしそうな小さな音を、今日のわたしは落とさず拾っていた。
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清水寺
坂の風景 |
そこから祇園まで歩いた。
雨に濡れた石畳が美しい。
寄り添う男女の後姿もまたいい。 |
祇園近辺 |
夜の京都は朱色が鮮やかに浮かび上がって艶めいて見える。
たくさんの人とすれ違う、橋の上。
深呼吸をしたのはこの旅で初めてのことだった。 |
河原 |
最近すこし一生懸命になりすぎてたかなー。
鴨川の河原をゆっくり散歩した。
川面に映る窓の明かりがゆらゆら揺れる。
明日もまだここに居られると思うとホッとする。
さぁ、明日はどこを歩こう?
→→つづく→→ |
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