韓国映画 「私のちいさなピアニスト」 レビュー
〜ピアノが二人の気持ちを歌い上げる〜
夢破れたピアノ教師と悲しい記憶を引きずったイタズラ少年。
そんな不思議な二人組が奏でる狂想曲。
見ているあなたの指もおそらく、ひざの上を踊りだすに違いない。
ピアノ教室を開いたものの前途多難なピアノ教師・ジス。
そこに近所のいたずらっ子のキョン・ミンが現れる。
部屋を走り回り、暴れる泥だらけのいたずらっ子のキョン・ミンがピアノを弾きだすと、ジスはすぐピンときた。
彼がピアノを弾けること。そして類稀なる才能の持ち主だということを…。
ひょんなことから始まったジスとキョン・ミンのピアノを通してのコミュニケーション。
ピアノがふたりの心のしこりを取り除き
ピアノがふたりの気持ちをつないでいく
映画の中に出てくるピアノの音がいつも違うのも魅力のひとつ。
こんなにもピアノは表情のある楽器だったのかと思い直す。
殊に哀しい(悲しいというよりはこちらだろう)音は、多彩な音で
泣き叫ぶような哀しさや、しんとした哀しさ、本当にさまざまである。
さて、はじめは、キョン・ミンの才能は自分の夢を叶えてくれる道具のようだと思っていたジス。
それがいつからか彼女も思っても見なかった、キョン・ミンに対する深い愛情が芽生え始める。
キョン・ミンもジスを母のように慕い、離れ難い心のつながりが出来上がっていく。
家族でも師弟でも恋人でさえも、こんなに深い絆は生まれないんじゃないかしらというほどの深い絆が…。
ジスとキョン・ミン
この二人を描く方法が素晴らしくいい。
まるでラブストーリーなのである。
手に手を取りはしゃぐ雪の道
分かり合えない、もどかしく長い夜
気持ちがすれ違った秋の並木道
それはもうまさに恋人同士のような絵なのである
二人が言葉を交わさなくても、伝わってくる。
ピアノが二人の気持ちを歌い上げる。
おとぎ話のような幸せいっぱいの時期は長くは続かなかった
キョン・ミンの身寄りがいなくなり天涯孤独の身になったことで、ジスは養子とする道を選ぼうとするが、彼の才能を伸ばすために、より有能な師のもとでピアノを習わせる道を選んだ。
泣きながら、別れる二人。
ひとり部屋に戻ったジスを待っていたのは、
いつもふたりで座ったピアノと、キョン・ミンがばら撒いた音符たち。
キョン・ミンの使っていた楽譜をなぞるジス。
でももうそこにキョン・ミンはいない。
キョン・ミンと出会ったことで、生活が乱されていたはずのジスなのに
反対にジスは人間的な成長を遂げていたのだった。
それは人に深い愛情を捧げることで生まれたものに違いない。
映画にはもちろん数年後…という部分も描かれているのではあるが、
それは見てのお楽しみである。
しかしその数年後を迎えるまでに、何度二人はピアノに向かったのだろう?
何度互いの名前を呼び、何度涙をしたのだろう?
それを思うと、青年に成長したキョン・ミンの指が鍵盤の上を軽快に踊るさまは本当に涙が止まらない。
拍手を送ったジスの心はいかばかりか。
大きな柔らかいあったかさに包まれて外に出た。
帰り道、偶然にも大きな楽器店の前を通った。
真っ黒なピアノが並ぶ中でためらったあと、「ド」の音を叩いてみた。
ぽーん。
ぽーん。
ぽーん。
同じ「ド」なのに、そのたびに違う響きを持っていた。
映画情報 「私のちいさなピアニスト」
公式サイト http://www.mylittlepianist.com/ |
「誕生日に食事に出かけた時の写真。
もうすぐ2ヶ月くらい経っちゃいますが… |
♪矢島の近況♪
最近密かなブームらしい「消しゴムはんこ」
やじまも彫っています。これが楽しい!
カッターナイフと消しゴムだけで彫ることが出来るんですよ。
空き時間が長い収録にも持っていって控え室で彫っている時があります。
私はよく手紙を書くので、今度は手紙にちょっと押してみようと考えています。 |