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身長
165cm
出身地
神奈川県川崎市
出身校
神奈川県立多摩高校→
中央大学文学部
入社年月日
2005年4月1日
星座
獅子座

2019/12/27 19年5月28日

19年5月28日

自分の生まれ育った地元で
あの事件は起きてしまいました。
川崎市で起きた殺傷事件。
ようやくほんの少しだけ
気持ちが落ち着いてきたように思います。

この7か月はとても長く感じました。
一度たりとも事件のことを忘れた日はありません。

あの日はたまたま事件現場のそばに居合わせました。

震える手で会社に電話をかけて
やってきたスタッフと合流して
取材をして、リポートをして、中継をしました。
自分の出来得ることは精一杯やったつもりです。
でもずっと何かがひっかかったままです。

今回の事件を通して様々なことを考えさせられました。

ひとつはメディアの人間としての自分。
もうひとつは、事件を目撃してしまった人としての自分。
苦しい気持ちのせめぎあいがありました。

あの日、事件現場に駆けつけたとき
目の前には本当につらい光景がありました。
人として、これは撮影出来ないと思い
持っていたスマホのカメラを起動出来なかった。
だいぶ離れたところに移動してようやくリポートしました。

撮れないと感じ、撮らなかったという選択は
メディアに携わる人間として正しかったのか。随分と悩みました。

それから、初めて自分自身が目撃者の立場として
いろいろな人に話を聞かれている時に思いました。

事件を目撃してしまった人に
その時の状況を思い出させることはこんなにも辛いのかと。
今まで自分が仕事として何の疑問も持たずにやってきたことは
取材をさせてもらっていた方々に
苦しい思いを強いることになっていたのではないかと気づいたのでした。

事件現場は暮らしの場所でもあるのです。
その現場に誰かのいつもの暮らしがあって、そんな場所でも生活は続いていく。

時折、あの現場のそばを見に行ってみるのですが
献花などはもうありませんし、以前と変わらない風景に戻っています。
その場所だと知らない人なら絶対にわからないくらい
日常が戻ってきています。

そこまで戻るのに多くの人が苦しみ、労力を割いてきたわけですが
日常が戻ってくることに安堵しながら、
その一方では何もなかったように
事件が忘れられていく…風化してしまうことが本当に良いことなのか
ということも考えてしまいます。

事件から半年が経ったとき、
メディアの人間たちはごく少数の記者を除いて
現場には来ていなかったと近所の方に聞きました。

報じられなければ、忘れられていく。
忘れられていけば、この事件のことで人が悲しい思いをしないで済むのか。
忘れられてしまったら、また同じようなことは起こらないだろうか。
行ったり来たり、揺れ動く思いを感じながら、
今回この投稿を書くこともとても悩みました。

目撃者でもこれほど揺れて、傷つき、迷います。
被害に遭われた方のご家族や、同じ学校に通っている方は
これとは比べ物にならないような思いをされていることは容易に想像がつきます。

この事件をきっかけに
聞かれる側の気持ちを少しでも感じた者として
人に寄り添った言動を心がけようと強く思いました。

2019年が終わります。
来年こそは、このような悲しいことが起こらないようにと祈ります。
またこうした悲しい事件が起こらないように、社会がどうあるべきか…
そういったことも取材を通じて考えていきたいです。