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8月9日 久々に・・・映画コラム。
  みなさま。
ご無沙汰しております。
暑い日が続いておりますが、いかがおすごしでしょう?

わたしは、と、いいますと・・・、
今年の夏は、かなり、ゴルフ熱が高まっております。
近所の練習場から、
炎天下の川っぺり、日焼け必至の練習場、
さらにはショートコースまで、
柄にもなく意欲的に練習に取り組んでおります。

おかげでうっすらと日焼けをし、
気づけばシミソバカスの子供達が、
ワタシのホッペタに縦横無尽に増殖しているではありませんか!
こ、これは大ピンチ!!
美白美容液が、ワタシを呼んでいる・・・!!!
(※否、ワタシが、美白美容液を。)

というわけで・・・、
久々に映画メルマガのコラムからの転載です。
今回は、・・・一口に言えば、オトナ映画です。オトナ映画。
ではご堪能くださいませ。

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今回ご紹介する作品は、「ふたりの5つの分かれ路」。
あるフランス人夫婦、ジルとマリオンの
「別れ」から「出会い」を描いた、フランソワ・オゾン監督の新作。

淡々と離婚手続きをする二人。
離婚は成立し、立ち去る妻、マリオン。
最後にジルに遣った視線は、
他人を見るかのような冷ややかなものだった。

映画は、そんな絶望的な別れのシーンから始まり、
そこから時間軸を遡って、二人の軌跡が描かれていく。
アルバムを背表紙からめくっていくかのように。

ディナーパーティで、夫の口から語られた事実、
二人の心の温度差がにじみ出ていた出産、
あまりにも幸せすぎた結婚式、
希望の光に満ちた海辺で、盲目的に恋に落ちた瞬間・・・。

季節を遡って克明に語られる5つのエピソードによって、
二人がなぜ終わりを迎えることになったのか、
その原因が少しずつ見えてくる仕掛けである。
次第に分かってくるのは、
別れに至った原因はひとつに特定できない、ということ。
小さな気持ちのすれ違いが幾つも重なった結果、
気づいたら、埋められない溝ができてしまっていたのだ。

「運命の分かれ道」とは恐ろしいもので、
その時点では、どこに分岐点があるのかすら見えない。
振り返って初めて、
「あのときの、あの出来事が、
ひょっとすると運命の分かれ目だったのかもしれない」と疑い、
「あのときこう言っていたら、こうしていたら・・・」
という後悔の念が沸いてくる。でも、それではもう遅い。


二人のやり取りの随所にも、
「運命の分かれ道」らしきものが垣間見える。
ゾっとすることに、まだ幸せだった頃にさえ、
「別れ」という結末を暗示するような、翳りが訪れる瞬間がある。
だが、二人はそんな別れへの伏線に気づくこともない。
気づくことができるのは、
先に結末を知らされている、我々観客のみだ。
・・・全く、怖い映画である。

しかし不思議なことに、
映画の中で時が戻るにつれ、
こんな風に感じるようになった。

この二人の結末は、決して悲劇ではない、と。

季節を遡り、昔に戻るごとに、
結末を迎えた二人がどっかりと背負っていた悲しみは徐々に影を潜めていき、
澱みのない生き生きとした輝きを取り戻していく。
その姿からは、二人が幸せな未来を確信できるような思いを抱き、
お互いを輝かせていられる特別な関係であったことが窺える。

始まりのあるものには必ず終わりがあり、また恋愛も然り、なのだろう。
だから、二人が出会い別れたのは悲劇でもなければ失敗でもない。
結末から振り返ることで、遡る二人の季節は、より輝きを増す。
映画の最後に描かれる、きらめくふたりの「始まり」を見て思った。
この二人は出会ってよかったのだ。
幸せは、確かにあったのだから、と。

♪映画データ♪

『ふたりの5つの分かれ路』
監督・脚本:フランソワ・オゾン
出演:ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ、ステファン・フレイス、ジェラルディン・ペラス
配給:ギャガ/2004/フランス/90分
※8月シャンテシネ他全国順次ロードショー

★ふたりの5つの分かれ路HP

http://www.gaga.ne.jp/futarino/

   
 
 
    
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