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3月5日 奇才コーエン兄弟の最新作、『ディボース・ショウ』をご紹介。

 
鑑賞直後の感想。
『コーエン兄弟に手招きされ、
ジェットコースターのような乗り物に乗せられて、
気づいたら、
まったく先が見えない真っ暗闇の中を猛スピードで駆け抜けていました。
しかも可笑しな客が大勢乗っていて、絡まれました。
でも、ジェットコースターだと思って乗っていたそれは、
実は営団地下鉄千代田線でした。
いやあ、一時はどうなることかと思いましたよ、おっと眩暈が・・・。』
やはり一筋縄ではいきません。さすがコーエン兄弟。

舞台はLA。
マイルズ(ジョージ・クルーニー)は、離婚訴訟専門の弁護士で、
不利な訴訟をも必ず逆転勝訴に持ちこむことで知られている超ヤリ手。
マリリン(キャサリン・ゼタ=ジョーンズ)は、資産家を狙って結婚、数年後に離婚、
慰謝料としてその財産をがっぽり手に入れることを目論むしたたかな悪女。
スローガンは「離婚は富と独立と自由のパスポート」。

この二人が、ある日、法廷で戦う。
「不動産王」の夫と離婚訴訟を起こしたマリリンは、
圧倒的有利に訴訟を進めていくが、
夫側のマイルズによる意外な隠し球で一気に逆転、敗訴。

だが、マリリンは転んでもタダではおきない女。
今度は「石油王」をつかまえて 再びマイルズに宣戦布告、勝負は第2ステージへ・・・。
ここからが本気モード。

2人の壮絶な騙しあい、密かな恋の駆け引きの連続に息つく隙もない。
幾重にも張られた巧妙な仕掛け、その着地点は・・・、
最後の最後まで予測不可能デス。

この映画のカギは、「婚前契約」。結婚時に離婚時の取りきめをする契約書だ。
実際、LAのセレブの間では必須(?)とか。
彼らの離婚時の財産分与はすべて「婚前契約」に基づいて行われるため、
契約書に婚前にサインさえしていれば、
たとえ何年後かに離婚することになっても、自分の財産はすべて守られるわけだ。
というか、そんな紙切れが存在すること自体に、私のような庶民は愕然とする。

「エッ、愛よりも金?」と。
愛し合って結婚を決めた途端に突然そんな紙を差し出されたら、
高鳴る胸も心拍数急降下モノである。

しかし、コレがないと生きていけないセレブな世界があり、
マイルズもマリリンもそこの世界の住人なのだ。
その寂しさや空しさに密かに気づいていながらも、
「婚前契約」という紙切れ一枚に振り回されてバトルを繰り広げていく様には、
奇妙な情けなさがあり、思わず笑ってしまう(とくにマイルズは滑稽の極み)。

この「婚前契約」のおかしさを利用したシニカルかつシュールな演出こそが、
コーエンマジックのなせる業であろう。
「愛」と「金」という対極にあるものを前に、2人はどんな選択をするのか。
純粋にコメディとして楽しむのと同時に、

一見冷血に思われる2人の(特にマリリン!)心の底にあるハズの、
「愛ある人間らしさ」に注目だ。

会社にて、松井さんの最新デジカメで『はいパチリ』の図。
いまだに、条件反射のようにピースサインをしてしまう私・・・
 
■作品データ/『ディボース・ショウ』
監督:ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン
脚本:ロバート・ラムゼイ、マシュー・ストーン、イーサン・コーエン、
   ジョエル・コーエン

出演:ジョージ・クルーニー、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ、
   ジェフリー・ラッシュ、ビリー・ボブ・ソーントン

配給:UIP/2003年/アメリカ/102分

※2004年4月公開予定

■『ディボース・ショウ』サイト
http://www.uipjapan.com/divorce-show/

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