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10月25日 今回は、『至福のとき』をご紹介。

 
チャン・イーモウ監督が贈る最新作『至福のとき』。巧妙なストーリー展開に唸ってしまった私。これは喜劇?悲劇?希望、苦しさ、切なさ・・・深い、複雑な思いが残るラスト。
幸せと悲しみの混在。人生のビターとスウィートを思わず考えてしまう作品。

父親に置き去りにされ、継母と義弟にいじめられて辛い毎日を送っている少女ウーイン。そんなある日、その継母に求愛する男、チャオが現れる。
実はチャオは工場をリストラされた中年男。しかし、継母のハートを射止めようという想いから、自分は「至福旅館」の経営者だと嘘をつく。

邪魔なウーインをその旅館で働かせてと、半ばチャオに押し付けるような形で頼み込む継母。結婚したいチャオはいまさら嘘とも言えず、なんと、その要求を引き受けてしまう。
困ったチャオは、閉鎖された工場の中にニセの按摩室をつくり、仲間に客の振りをしてもらい、架空の仕事場を用意した。そこで一生懸命働くウーイン。客の喜ぶ姿に、感情を押し殺して生きていたウーインの表情に浮かぶ、生まれて初めての笑顔。

「もっともっと働いて、お金が貯まったら目を治したい。最初に見たいのは父親とチャオの顔・・・」いつの間にかチャオとウーインの間にできた親子のような絆。
・・・でもやっぱり、ウソは、永遠には続けられない・・・。

「仕事場はウソだったけど、心は本物」
チャオがついた些細な嘘。そこから始まった大掛かりなウソ芝居は、次第に、純粋に、ウーインの幸せを願うためだけのものとなっていく。

ウソを悟った瞬間、ウーインは落胆するのと同時に、むしろ、少し可笑しくて笑っただろう。自分のために必死になって、ウーインの心に初めて光を与えてくれたチャオの愛情に感謝して。急展開の末のラスト、ウーインが流す涙には、悲しみだけではない、ありがとうの気持ちと、これからの人生を強く歩んでいく意志を感じずにはいられない。

ウソは大いなる罪。
でも、こんな風に人の心に柔らかな光を与える、温かい愛ある嘘なら、・・・あってもいい。

■作品データ/『至福のとき』
監督:チャン・イーモウ
出演:トン・ジエ、チャオ・ベンシャン
配給:20世紀FOX/2002年/中国


※2002年11月2日Bunkamuraル・シネマにてロードショー

■『至福のとき』公式サイト
http://www.foxjapan.com/movies/happytimes/

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