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8月2日 日々のかほり

随分と暑くなってきました。
私が担当しているBS朝日の「クイズ!人生ゲーム」では、
夏、真っ盛り!!ということで、先日は浴衣で収録しました。

帯には般若の顔が!

さてさて。
7月から読売新聞土曜版で、月に1回エッセーを書くことになりました。
日々の生活の中で感じたことを、そのまま言葉に乗せられたら、そんな気持ちで、
「日々のかほり」と名前を付けました。
夏から冬へ、半年間のこのエッセー。私自身も書くのを楽しみにしています。
1回目は7月16日の読売新聞夕刊に掲載されました。↓に転載します。

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皆さま、はじめまして。野村真季と書いて、のむらまさき、と申します。
この名前と30年。わたしの中ではすっかり慣れた名前なのに(当たり前か!)、
初めてお会いする人に名前を言うとびっくりされることが多いのです。
「まさき」は男の人に多い名ですし、何より「のむらまさき」さんという俳優さんもいらっしゃいますし。
三人姉妹の末っ子だから、両親は男の子がほしかったのかな、と思った時もありましたが、突き詰めるまでもなく、聞きそびれたままです。

さて、先日のこと。私のすぐ上の姉に、二人目となる男の子が産まれました。
お昼過ぎに、産まれたわよ、という母の上ずった声を電話で聞き、いそいそと病院へ向かいました。
産まれたてほやほや(という言い方もヘンですが)の赤ちゃんを見るのは初めてのこと。感動して泣いちゃうかな、なんて先走って感傷的な気持ちになりつつ、いざガラス越しに対面してみると、不思議なもので、真新しい物体への観察の気持ちが高まって、感動というよりも、ひたすら「うわぁ 〜」と感心する私。
姉から産まれてたった3時間の新しいヒト。初めて会うのに、なんだか初めてじゃないような、奇妙な感じ。両親と私が覗き込むと、顔だけでなく体まで真っ赤にして大きな声で泣き、何を掴もうとしているのか、両手を精一杯上へ上へと伸ばしています。生きることの原点を見たような、その小さいながら強い存在感に気圧され、息をのむばかり。
ま、実況の仕事じゃないしと我にかえって隣を見てみると、言葉を奪われっぱなしの私とは対照的に、目尻を下げ、その泣き声のいちいちに微笑み語りかけている両親。
そして、この日からお姉ちゃんになった、3歳になる姪っ子ちゃんはというと、ポケモンカードをお守りのように握り締めながら、新しい弟を見てぽつり。「こんにちは」
驚きと納得。そうよね、姉弟だけど初めて会ったんだもの。きちんとご挨拶したのよね。いい子、いい子。これから、長いつきあいになるんだから。
そんな風に心の中で声を掛け、思い出したように姉にも「おつかれさま」

父は姉に、「親が子供にしてあげられることは、名前を付けてあげることくらいだ。育てるのは当たり前のことなんだから」と言ったそうです。
そのせいなのか、姉は大仕事を終えたばかりだというのに、病室に漢和辞典を持ち込んで首っ引き。
家に帰り、甥っ子の誕生花を調べてみると、「ひまわり」でした。光り輝く夏の花。「愛慕」という花言葉のように、たくさんの愛を受けて、愛を与えられる人になってほしい、と親族その一としてはおせっかいにそう思うのです。
いまだ名付けられない人は、どんな名前になるのかしら。男役風の名前を持つオバサンとしては、女役風の名前を持つ男の子もいいじゃないって思います。でも、「ひまわり」くんはやりすぎか。

父と母がわたしにつけてくれた名前が、また気になりだしました。子供が親にできる孝行は、名付けられた自分の名前を大事に生きることなのかな。

   
 
    
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