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六本木ヒルズの毛利庭園にある、大きな桜は見事に咲き誇り、
しばし時を忘れる一週間でした。
今はところどころにのぞく緑の葉っぱは、
どうしてだか、新入生のような初々しさを感じます。 |
| テレビ朝日をバックに春風を感じたりして。 |
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今回の映画コラムは、桜満開の時期に書きました。
「トスカーナの休日」
桜を見上げていると、どうしてこんな気分になるのだろう。
幸せなような、悲しみのような、儚い気持ち。
ぼうっとした夢のただ中にいるような。
なのに、通り過ぎた後は、気持ちがすこうし、軽やかだ。
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作家のフランシスは、仕事も結婚生活も順調だったのに、
夫から離婚を突きつけられる。
生活も家も失って、悲しみの中にいる彼女に、
親友のパティはトスカーナ旅行をプレゼントする。
トスカーナで、フランシスは古い家を衝動買いしてしまうのだ。
その家を修復する過程で、いろんな人に出会い、また傷つき、立ち直っていく。
トスカーナの明るい太陽の下で、
離婚に傷ついたフランシスが、新しい自分を手に入れていく。
フランシスが会うトスカーナの人々の中に、かつて巨匠フェリーニに見出されたというキャサリンがいる。
彼女が時として語る「フェリーニの言葉」たちが、フランシスの心に響いていく。
その中の一つのセリフをおすそ分けします。とても印象的だったので。
「過去が現在を損なっていく。現在に集中しなさい」
過去に痛みを感じているうちは、きっと現在の喜びすら感じ取れないのでしょう。
例えば、恋に破れたとき。
あの人と一緒だった、という過去の出来事が辛くて、悲しくて。
心だけ重力を感じているかのように、前に進むことができない。
だって、過去こそが、現在になってしまっているから。
けれど、
時間が経ってみると、
いろんなことに感謝できている自分にびっくりしてしまう。
もしくは、苦しい時に自分がしてしまった失態の数々に、苦笑いしてしまったり。
また新しい恋に、全力疾走している。
「過去」を受け入れて、乗り越えたとき、もはや「過去」ではなく、現在に力を与えてくれる存在になるのかもしれません。
力強く、そして優しく。
トスカーナの明るい陽射しは、過去から現在に歩もうとしている彼女の背中を、しっかりと押していたに違いない、と思うのです。
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さて、ここ日本の春の日差しは。
優しく降り注ぎ、あらゆるものを包み込み充足させる。
桜も、ひとも。
穏やかな陽だまりの中で、
満開の桜の木の下で。
思い切り春を吸い込んで。
さぁてと。今日も一日頑張りますか。 |