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 「たまごの電車」 (2010/5/26)


4月で、入社10年目を迎えました。
過ぎた時間は、生活からこぼれ落ちることがあります。








随分と久しぶりに、西武新宿線に乗った。
車両は、たまごの黄身の色。
記憶は溶けて、流れ出る。

快速は、みるみる駅を通過していく。

社会に出る少し前。
踏切の前で、何本もの列車を見送った。

好きなことを、仕事に。
「学生」と「社会人」に挟まれた、
ピーナッツクリームのような自意識。
スプーンひとさじの、こってりした甘みと、わずかな苦み。
現実は厳しい。
それでも、自意識は惑溺する。

折り合い、ためらい。
歩幅を合わせる。
周りに、自分に。

踏切の前に立っていた頃。
日常に触発され、思考を重ね、不安になり、
それでいて先々は、むきたまごのようになめらかに見えた。

そして、10年経った。
うっかり流れ出た黄身を焼きつける。
まだ半熟だ。

快速は、みるみる駅を通過していく。

   
 
 
    
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