それぞれの理由は明確だ。
交通手段の多様化による乗車率の低下と、車両の老朽化。
不況による、百貨店の業績不振。
打って変わって、カジュアル衣料専門店の台頭。
目的地には、早く着くほうが―。
少しでも、安いほうが―。
“速さ”も“安さ”も追い求める、“乗客”であり“買い物客”。
時代の流れを憂える?
ならば、もっと、乗ったり、出かけたり。
情緒だけで現状を、美しく織り上げてはいけない。
上野で。
さっきの少年が、「またね」と叫ぶ。明日も会える級友に告ぐように。
吉祥寺で。
シャッターは夕日の速度で閉まり、店長は一礼したまま動かない。
春雨のようにやわらかな拍手が聞こえた。
遠い記憶を、ふと辿る。
いつかの国語で習った、「最後」と「最期」の違い。
数学の証明問題。
末尾に記した”Q.E.D.”は、ラテン語で「かく示された」。
つまりこれで、終わり。
休日の人いきれ。
リポート用のハンドマイクを、コートのポケットに押し込んだ。
示された現実と、示したい思いを、手のひらに刻む。
拍手はまだ、やまない。 |