小学6年生の頃。中学受験をすべく、進学塾に通っていました。
年の瀬も迫り、いよいよ迎える冬休み。受験生にとっては天王山です。
毎朝早く家を出て、帰宅するのは夜の10時過ぎでした。
“サンドウィッチ作戦”
冬季講習の、講座の名前でした。
2時間単位で区切られる時間割の中身は、
国語、算数、理科、社会、国語、算数…。
つまり、科目の間に科目が詰め込まれている、ということ。
“具”はぎっちりでも、挟む“パン”が私ではおよそ頼りない。
「応仁の乱」や「つるかめ算」と格闘しながら、
そんなことをぼんやりと考えていました。
持って行くお弁当は、昼夜二つ分。
二段に重ねて、母がランチマットで包んでくれました。
模試の前の、カツ丼。体力低下の時は、焼肉丼。
そのうち、ご飯ではなくサンドウィッチが続くので「どうして?」と聞くと、
「だって、作戦名じゃない!」と。
随分と後になって、母は言いました。「実はね…」
サンドイッチは、パンに挟むだけでしょう?
ご飯のお弁当の時より、随分助かったのよ。
「お母さん、たまごサンドにキュウリは入れないでね」
「ダメ!嫌いなものもきちんと食べなさい」
「だって、夜に食べるから傷むでしょう?」
「…」
キュウリは避けられても、苦手な算数は避けられず。
ホットドック、ツナサンド、フルーツサンド。
二食分のお弁当が詰まった通塾カバンは、帰りは少しだけ軽くなっていました。
詰め込んで、詰め込んで。
ハムやら、チーズやら、知識やら。
今もあるのかなぁ、サンドウィッチ作戦。 |