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Vol.67 「おいしいところ」 (2004/06/24) |
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前回の更新から、1ヶ月が経ってしまった。
チャイの湯気はとうに冷め、アイスチャイがおいしい季節になった。
先月から、「日刊ゲンダイ」の土曜版で三週に一度エッセイを書かせて頂いている。
発刊日はたいてい近所のコンビニまで買いに走るのだが、
先日は、駅の売店に立ち寄ってから電車に飛び乗った。
週末の午後とあって、車内は混んでいた。
冷風になびく紙面を手で押さえながら、恐る恐る記事を探す。
立ったままの姿勢で新聞を読むのは、思いの外大変だ。
揺れる車内になかなか視点が定まらないし、
縦書きの紙面は、横書きで打ち込んだパソコン画面とは印象がだいぶ違う。
そんな中、最後まで読み終わらないうちに、電車は目的地に着いてしまった。
言いたいことは、最後に書いてあったのに。
これでは、なかなか伝わらない。
短時間で、しかも、立ったまま。
部屋でじっくり読むのではなく、電車の中で新聞を広げるということ。
速さと簡潔さ、そして、より早い段階での結論の提示が求められていることを改めて痛感した。
その日の帰り道、いつものコンビニに寄った。
デザートが陳列された棚の前で、甘い誘惑にしばし悩む。
杏仁豆腐のみかん。
カスタードプリンのカラメルソース。
おいしいところは、全てカップの底に詰まっている。
さっきのエッセイみたいだと思った。
言いたいことを、私は最後に書いてしまう。
しかし、ショートケーキの苺のように、一番のお楽しみが眼前で堂々と主張する場合もある。
そういう書き方をしないと、伝わらないことがある。
おいしいところも、言いたいことも。
伝え方だって、デザートみたいに色々だ。
だが、文章を書いて伝えることは、決して甘くない。 |
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