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Vol.56  「帰省」  (2003/12/31)

早朝勤務の後、まだ開店前の洋菓子店に並んだ。
雑誌で見たのだろう。父からの要望は「チョコレートケーキ」。
賞味期限を確認してから、東京駅へと向かう。

年末に乗る新幹線はなぜか優しい。
網棚にひしめく東京土産の紙袋。
通路脇には、折り畳まれたベビーカー。
混んでいても歩きにくくても、誰もいらいらしていない。

車内の喧騒に漂う不思議な安堵感。
座席で新聞を広げたら、すぐに眠りに落ちてしまった。

次は、京都。

車内アナウンスが遠くで聞こえる。
閉じた瞼をぎゅうぎゅうと押してくる、オレンジの光。
眩しくて目を開けると、車窓越しに夕陽が見えた。
今年最後の太陽は静かに落ちていく。

新幹線は、もうすぐ新大阪に着く。
もう、あと数時間で新しい年がやって来る。
   
 
 
    
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