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Vol.49  「金木犀」  (2003/10/26)

日曜日。久しぶりの秋晴れ。
網戸を潜って金木犀が薫ってくる。
マフラーを巻いて、思わず外に出た。

路地には、落ち葉がカラカラと転がって吹きだまる。
遠くで響くスピーカーの割れた声。小学校の運動会だ。

甘い匂いを頼りに歩けど、その所在は分からぬまま。
じんわりと首に汗をかき、マフラーが急にちくちくする。

ようやくたどり着いた軒先には、小さな花が寄り添うように咲いていた。

金木犀は控えめだ。
形も咲き方も散り方も。

風が吹くたび、小さな星がしゃらしゃらと流れ落ちる。
冷えた耳たぶに散るかすかな音。

明日になれば、黄橙の花が辺りにふっさりと積もるだろう。
目には濃く、香りは薄らぎ、季節は移ろう。
   
 
 
    
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