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Vol.35  「上弦の月」  (2003/05/12)

野外ライブに出かけた。
女の子たちの足元は気の早いサンダルで、
初夏の夕暮れには少し寒そうだった。

空にしゅわっと溶けていく音。
友達はチューハイ、私は炭酸ジュース。
耳の後ろで、夜風がびゅうびゅう。

見上げると、オムレットみたいな上弦の月だった。

「ほっとする」とか、「ぬくもりがある」とか、
やさしさはいつだってあたたかい。
それでも今は、こんなにも大勢が、
ひんやりとした夜風に震えながら、うっとりしている。

オムレットは、要冷蔵。
冷たいやさしさは、デザートみたいに甘い味だ。
   
 
 
    
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