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Vol.73 「ナイスショット」(2008/12/15)

「光ガ丘中学の村上さんですか?」

視聴者の方々からのメールを拝見していて、懐かしい学校名を見つけた。
「もし違っていたらごめんなさい。
先日、中学時代の同級生の結婚パーティの打ち合わせをしていて、
そんな話になりました」
女子校出身の私だが、父の関西への転勤で、
共学の中学校に通っていたことがある。
丘の上にあり、街がどこまでも広く見渡せた。
紅葉ガ丘、月見山、ゆずり葉台…。校区の地名も美しかった。
「僕は今、ラジオ局でDJをしています」

記憶の糸はそこここに落ちていて、つながったりほどけたりする。
テニス部で、背が高く、眼鏡をかけていて、よく喋る。
同じクラスだったコウジ君だ。

コウジ君と撮った卒業式の写真は、今でも実家にある。
記憶の糸が、ぽっと染まるわけではなく…むしろ、後ろめたい。
当時、親友のナオちゃんが、
テニス部の王子様・タカハタ君に長らく思いを寄せていて、
王子と一緒に写真に収まるきっかけを作るためだけに、
彼とコンビを組んでいたコウジ君に声をかけたのだ。
「ねえ、一緒に撮ろう!」
何が何やら分からぬまま、パチリ。
すかさず、親友は王子とパチリ。
わずかな呵責は、卒業証書と一緒に丸めてしまった。

聴いていた深夜ラジオの話。
宿題を見せてもらった話。
校門までの長い坂道の話。
写真のことを謝りたかったが、そもそも覚えていないかもしれない。
そして、仕事の話。

「お勧めののど飴あったら教えてね」
「関西来たらラジオ聴いてな」

「ちなみにさ…」
よし、さり気なく聞いてみよう。

「ナオちゃんがタカハタ君のこと好きだったのって知ってる?」
「もちろん知ってたで」

やはり詫びるべきか。
でも、私たち、いい仕事したよね?


ナオちゃん(写真左)と一緒に
演劇部のヒロインとして、大活躍でした


(「日刊ゲンダイ 週末版」12月15日発刊)
   
 
 
    
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