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Vol.24 「ペ・ヨンジュン氏インタビュー」 (2005/09/24)

映画『四月の雪』が公開中です。
先月、キャンペーンでペ・ヨンジュンさんが来日した際、番組でインタビューに行って来ました。
「祐子、何を着ていくの?失礼のないようにね」
四月の“雪”にちなみ、執拗に白いスーツを勧める母は、何時になく動揺していました。
試写会場の周辺には約9000人が集まり、
イベントのチケットには、オークションで300万円の値が付きました。
連日の加熱ぶりを番組で報じる一方で、日に日に緊張は高まっていきます。

「これからヨンヨンに会うの?」
当日、ホテルのロビーの隅で腰掛けていると、数名のお母様方から声を掛けられました。
「ヨンヨン」とは、彼のファンの間での愛称のようです。
「ヨンヨンは優しいから、きっと握手してくれるわよ!」
「は、はい。がんばります…」
肩にかかる重みをひしひしと感じながら、部屋へと向かいました。

「アンニョンハセヨー」
真っ白なシャツに、ジーンズ。
そして、あのマシュマロのような笑顔。
大きな手をさっと前に出し、聞き手に着席を促してくれます。
全てがイメージ通りである一方で、会話の中では演技への妥協なき情熱が感じられました。
「色々感じてもらうことに、演じる意味があるのだと思います」
左手には、ピンキーリングがキラリと光っています。
「その指輪は…プレゼントですか?」
「これは、自分で買いましたよ!」
野暮な質問にも、ハハハハハ!と笑って答えてくれました。

実は、私たちスタッフの間では、ある計画が持ち上がっていました。
以前、『徹子の部屋』の番組で黒柳徹子さんと携帯電話でツーショット写真を撮っていた彼に、
今回も撮影をお願いしてみよう。
通常、インタビューにおける質問以外の行動は禁止されています。
厳重な警備体制での、僅かな確率の賭けでした。

終盤に差し掛かった頃、見慣れた人影が視界をよぎりました。
番組のディレクターです。
「行け、村上!お願いするなら今だ!!」と、無言のサイン。
しかし、行けませんでした。
もしかしたら、応じてくれたかもしれません。
一緒に写真を撮った方が、映像上は盛り上がります。
でも、そうすることで、何かが崩れてしまいそうな気がしました。
私たちはこの場所に何をしに来たのか。
そして、皆が本当に聞きたいことは、何だろうか。

「惜しいなぁ。OKだったかもしれないのになぁ!」 
インタビューの後、呆然と立ち尽くす私にディレクターが駆け寄ってきました。
「すみません…」
お願い出来なかったのか、しなかったのか。
二つの選択肢は、いつまでもぐるぐると頭の中を回っていました。


(「日刊ゲンダイ」9月24日発刊)
   
 
 
    
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