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Vol. 8 「丸山先生の香水」 (2004/10/16)

「今日はなんだか、いい香りがしますね?」

先日、担当している早朝番組「やじうまプラス」のスタジオで、にわかにバラの香りがしました。
「香水をつけてるんよ。眠気覚ましになぁ」
ちょっと照れて、コメンテーターの丸山和也弁護士がおっしゃいました。
思わず、丸山弁護士の袖口に顔を近づけます。
「村上さんは、香水つけないの?」
隣に座っていらっしゃる、政治ジャーナリストの岩見隆夫さんもおっしゃいました。
「はぁ…」
口籠るや否や、「そりゃあ、だめだなぁ!」と、お二方。
「香水をつけてこそ、大人のいい女なのになぁ」
「はぁ…バニラのにおいは好きなのですが」
「え、アイスか?」
番組終了後も、スタジオのテーブルにはほのかに花の香りがしました。

ほどなくして、コメンテーターの方々と社員食堂で朝ごはんを食べている時。
「村上さん、さっきの、これや!」
丸山弁護士が、急にごそごそとカバンから小さな瓶を取り出し、
しゅしゅっと私の袖口に香水をふりかけて下さいました。

つけて頂いたのは嬉しかったのですが、少し量が多かったようで…。
その後に行われたスタッフの反省会では、会議室の窓を閉め切っていたせいもあり、
私の袖口が強い香りを放っていました。
ADさんたちの息苦しそうな表情は、
オンエアの反省点だけに因るものではなかった気がします。

強く香りすぎても、むせてしまう。
全く香らないのも、心許無い。
余韻が残るくらいの、ほのかな残り香。

人と接する時の距離感も、香りと同じような気がします。
近付きすぎず、遠すぎず。
踏み込まず、押し付けず。
突き放すでもなく、無関心でもない。
去った後にも、その人の印象を残すような。
それが、大人の女性でしょうか。

そんなことを思いながら家に帰ると、
週末に作ったカレーのにおいが、まだ部屋に残っていました。
「香り」ではなく、「におい」。
においは生活です。
カレーと、朝の香水が混じったせいか、急にむせ返り、
慌てて部屋の窓を開けて、空気の入れ替えをしました。
来月、26歳になります。


(「日刊ゲンダイ」10月16日発刊)
   
 
 
    
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