前の記事を読む 次の記事を読む  

 
 

Vol.46 9月12日
「女子の映画」(『崖の上のポニョ』/『赤い風船』/少しだけ『SEX AND THE CITY』)



近頃、「女子」という言葉が世に溢れて久しい。
おんなのこでも女性でも婦人でもなく、女子。
この言葉はエイジレスだ。
アラサーとアラフォーの境目などは、「女子」の二文字で即解決!

そして、いくつになっても思いはひとつ。


女    子

女子


好きな気持ちに罪はない。世代の境界もない。
だが、その伝え方に関しては、年齢を重ねるほど難しくなる気がする。
「付き合う=結婚」を、意味するとかしないとか。意識するとかしないとか。

そんなもどかしさを拭い去ってくれた、世にも素敵な女子たちがいた。
彼女たちは人間ではないが、そんなことは取るに足らない。
さかなの子と、真っ赤な風船だ。



『崖の上のポニョ』

海に棲むさかなの子、ポニョ。
自分を助けてくれた少年、宗介に会うために家出する。
大津波を起こそうが、車がひっくり返ろうが、荒れた波間をひた走る。
「宗介んとこ、きたーーーーーーーーーー!!!!」
人間の姿になって、大好きな人に会いに行く。


(C) 2008 二馬力・GNDHDDT

『赤い風船』

1950年代、パリの下町。
少年パスカルは、街灯に結ばれた赤い風船を見つける。
紐を離しても、風船はパスカルの少しだけ後を、ふわりふわりとついてくる。
授業中は、校門の外でお行儀よく待ち続け、いたずらっ子たちに石を投げられても、風船は決してパスカルの傍から離れようとはしない。



(C) Copyright Films Montsouris 1956

ポニョの大胆さと、風船の奥ゆかしさ。
全篇に揺るぎなく溢れる、邪気のない愛情。

一方、大人の場合。途端に現実にまみれてしまう。
例えば、頼まれてもいないのに、食材を抱えて電撃訪問し、唐揚げやらカレーやらを作ってしまうフライング。相手の退社時刻を見計らって、駅前の喫茶店でコーヒーを飲んでいる自家製の偶然。
…分かってはいるのだ、独りよがりであることを。
何より、分かられたくないのだ。思いをこんなにも巡らせていることを。

でも、彼女たちはやってくれた。
どーーーーーーっと、ポニョが思いをぶつければ、
じーーーーーーっと、風船が傍に佇む。
そうよね、好きだという思いは、決して悪くないのよね。
なかば祈るような気持ちで、スクリーンに釘付けになる。

ここで忘れてはならないのは、相手―男子の気持ちだ。
強引だの、重荷だの、受け取り方によってはいくらでも否定的になるこれらの気持ちを、作中の彼らは完璧に受け止めてくれている。

「絶対に守ってあげるからね」迷いなくポニョに言った、5歳の宗介。
片やパスカルは、時雨に風船が濡れぬよう、傘を持ったおじさんに「中に入れてね」と頼む。自分は濡れたままで。
守るべきは、小さな自尊心ではなく、目の前にいる人なのだ。

日々。
夢をみたり失望したり、時めきを失ったり取り戻したり。
目下、大人女子の絶大な支持を得ている『SEX AND THE CITY』が「共感する」映画なら、これらの二作品は「浄化される」映画だ。

まっさらな気持ちになって、いざ。
思い思いの、あの人の元へ。



♪作品データ♪
『崖の上のポニョ』
原作・脚本・監督: 宮崎駿
音楽:久石譲
出演: 山口智子、長嶋一茂、天海祐希、所ジョージ 他
配給: 東宝/2008/日本
※ 日比谷スカラ座他 全国東宝系にて公開中

『崖の上のポニョ』公式サイト
http://www.ghibli.jp/ponyo/


♪作品データ♪
『赤い風船』
★1956年、カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞作品★
脚本・監督: アルベール・ラモリス
出演: パスカル・ラモリス
配給: カフェグルーヴ、クレストインターナショナル/1956/フランス
※ シネスイッチ銀座他にて公開中

『赤い風船』公式サイト
http://ballon.cinemacafe.net/


♪作品データ♪
『SEX AND THE CITY』
原作・脚本・監督: マイケル・パトリック・キング
衣装デザイナー: パトリシア・フィールド
出演: サラ・ジェシカ・パーカー、キム・キャトラル、
クリスティン・デイヴィス、シンシア・ニクソン、
クリス・ノース 他
配給: ギャガ・コミュニケーションズ/2008/アメリカ
※ 日劇3他にて公開中

『SEX AND THE CITY』公式サイト
http://sexandthecity-movie.gyao.jp/

   
 
 
    
前の記事を読む 次の記事を読む