ポニョの大胆さと、風船の奥ゆかしさ。
全篇に揺るぎなく溢れる、邪気のない愛情。
一方、大人の場合。途端に現実にまみれてしまう。
例えば、頼まれてもいないのに、食材を抱えて電撃訪問し、唐揚げやらカレーやらを作ってしまうフライング。相手の退社時刻を見計らって、駅前の喫茶店でコーヒーを飲んでいる自家製の偶然。
…分かってはいるのだ、独りよがりであることを。
何より、分かられたくないのだ。思いをこんなにも巡らせていることを。
でも、彼女たちはやってくれた。
どーーーーーーっと、ポニョが思いをぶつければ、
じーーーーーーっと、風船が傍に佇む。
そうよね、好きだという思いは、決して悪くないのよね。
なかば祈るような気持ちで、スクリーンに釘付けになる。
ここで忘れてはならないのは、相手―男子の気持ちだ。
強引だの、重荷だの、受け取り方によってはいくらでも否定的になるこれらの気持ちを、作中の彼らは完璧に受け止めてくれている。
「絶対に守ってあげるからね」迷いなくポニョに言った、5歳の宗介。
片やパスカルは、時雨に風船が濡れぬよう、傘を持ったおじさんに「中に入れてね」と頼む。自分は濡れたままで。
守るべきは、小さな自尊心ではなく、目の前にいる人なのだ。
日々。
夢をみたり失望したり、時めきを失ったり取り戻したり。
目下、大人女子の絶大な支持を得ている『SEX AND THE CITY』が「共感する」映画なら、これらの二作品は「浄化される」映画だ。
まっさらな気持ちになって、いざ。
思い思いの、あの人の元へ。
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