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Vol.10 5月15日 『ベッカムに恋して』

 
今回の映画紹介は「ベッカムに恋して」。
サッカーに疎く、ベッカムの熱烈ファンでもないのですが、その強烈なタイトルに惹かれました。
後日、この映画とは全く関係なく、渋谷で開催されている展覧会「girls don’t cry」に出かけたのですが…。
そうしたら、点と点が結びついて、ひとつの線になったんです。
題を付けるとしたら、「少女」かな。

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「ベッカムに恋して」

少女のひたむきさが、キラリと光る映画だった。
主人公のジェスは、パンプスよりもスパイクを欲しがるインド系の女の子。両親に大反対されながらも地元の女子サッカーチームに入団し、選手になるという夢に向かって前進していく。そんな姿が、カルチャーギャップや友情、恋愛を絡めて紡がれている。

自分の夢を、ただひたすらに信じて。
女の子の「健気さ」や「ひたむきさ」は、いつだって甘美だ。

女性の一生のうち、もしかするとこの時期でしか見られないもの。ちょうど、4月に桜が咲き急ぐように。刹那的ゆえの、ぞっとするような美しさに似ている。

無防備なまっすぐさは、とてつもないパワーを生む。しかし、それらはいつだって強引だ。目的に向かったベクトルは、自己完結型。彼女たちは周りが見えないどころか、周りを寄せ付ける隙すら与えない。

目的に向かって努力することと、実現する喜び。誰もが共感するに違いない。しかし、背景には様々な「現実」が存在する。それらを受け入れられない未熟さや不器用さを持つのが、「女性」ではなく「少女」なのだ。

少女の持つ、純粋さ。
それ故の、残酷さ。

まるで光と影。この映画は、少女の「光」の部分を照らしている。だから、こんなにもキラキラと爽快なのだろう。

夢見るだけでは生きていけない。現実を見据えようと、頭では理解している。しかし、どこかで砂糖菓子のような甘さを求めているからこそ、それらを全肯定してくれるものに惹かれてしまう。

では、陰の部分はというと?

 

「girls don’t cry」

奈良美智、草間彌生らによる、「girl(=少女)」をテーマした展覧会が開かれていた。

攻撃的で、目に光のない憂鬱な少女。
制服の胸元を広げた、上目遣いの女子高生。
ピンクのバンビにまたがって微笑む少女。

大人になることを拒否しているのか、現実との折り合いを想像だにしていないのか。
彼女たちは、不完全さを駆使して生きている。無意識でも、そうでなくても。

純粋さを追求した「ベッカムに恋して」。
残酷さを表現した「girls don’t cry」。
二律背反する、普遍の聖域。
その存在は、少女の時期を過ぎた女性にとっても、とてつもなく魅力的だ。

■作品データ/『ベッカムに恋して』
監督:グリンダ・チャーダ
脚本:グリンダ・チャーダ、グルジット・ビンドラ、ポール・マエダ・バージェス
撮影:ジョン・リン
美術:ニック・エリス
出演:パーミンダ・ナーグラ、キーラ・ナイトレイ、ジョナサン・リース・マイヤーズ、アヌパム・カー、デヴィッド・ベッカム&ヴィクトリア・ベッカム(特別出演)
配給:アルバトロス・フィルム/2002年/イギリス/112分

※4/19(土)よりシネスイッチ銀座、テアトル新宿、シネ・アミューズほかにて公開中

「ベッカムに恋して」サイト
http://www.albatros-film.com/movie/beckham/

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『girls don’t cry』展
PARCO MUSEUM
にて、5/26(月)まで開催。
無休 10:00AM〜8:30PM(最終日〜5:00PM)
一般700円/大高中500円

■PARCO MUSEUMサイト
http://www.parco-art.com/parco_museum/

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