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Vol. 6 11月22日 『tokyo.sora』
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東京の空の下、
6人の女のコの物語。

ちいさな胸と恋のはざまでゆれる、
好きな人に好きといえない、
ティッシュくばりとオーディションを日々くりかえす、
何もおきない毎日にただボーゼンとする、
夜はランパブ、昼は小説を書く、 
いつまでたってもカットさせてもらえない、

おきることはちがっても、これは、ぼくらの話だ。
東京という街にひとりいきる、そんなぼくらの話だ。

自分のことで手いっぱいのぼくらは、
目の前の誰かをすくうことなんてできない。
でも、本当にそうだろうか。

誰かの思いは、誰かにつたわる。
そう思いたい。

思っているあいだにも、日々はすぎていくけれど。

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(パンフレットより引用)

たまに、息苦しくなる。すれ違う人々が、
背景に溶けているからだ。
精巧にできたセットみたいに。空の表情は、
いつだってくるくる変わるのに。
雨が降れば傘を差し、
倒れた自転車は避けて通る。
彼らの日常に潜んだ感情はめったに姿を
現さない。そして、こんなにも毎日、
たくさんの人と同じ空の下にいる。

だからたまに、雲間に潜んだ日差しのように人々の感情が道端に流出すると、
私はちょっとだけ安心する。

駅の階段で足がつまずいて、カクンとバランスを崩した時。
スーパーの店頭に積み上げられたトマトを奥から取ろうとして、すべて床に撒き散らしてしまった時。
その時に聞こえる、ちいさな声。
「大丈夫ですか?」だったり、「クスッ」という笑い声だったり。
そうやって、みんな声を潜めて生きていることの窮屈さ、寂しさ。
気温だけでなく、体温も感じたいと思う孤独さ。自分のことで精一杯の人たちが、
同じ空の下で、同じものを見て、何かを感じる時。
私は、自分が生活していることを思い知る。

たまに、気持ちを日常に流してもいいと思う。コンビニでお目当ての菓子パンが見つかった時、思わず頬がほころぶ日常を、とてもいとおしいと思う。

そんな気持ちを、この映画は受け入れてくれました。

■作品データ/『tokyo.sora』
監督・編集:石川寛
音楽:菅野よう子
出演:板谷由夏、井川遥、仲村綾野、高木郁乃、孫正華、
       本上まなみ、長塚圭史、石川伸一郎、坂本サトル、
       遠藤章造、香川照之、西島秀俊、他

配給:日活、東京テアトル/2002年/日本/127分

※2002年夏、シネセゾン渋谷ほかにてロードショー公開

 

■『tokyo.sora』公式サイト
http://www.tokyo-sora.jp/

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