- 170cm
- 福岡県福岡市
- 日本女子大学附属高等学校→
日本女子大学 - 2001年4月1日
- 蠍座
乗っかれない子どもだった。
例えば、バレンタイン。
小学生の頃、2月14日はすでに特別な日で、
女子が男子に告白できる日で、
学校にチョコレートを(こっそり)持ってきても良い日で、
でも、先生に見つかると、取り上げられる危険性もはらむ。
高学年になるほど、このイベントは熱を帯びていった。
しかし。
好意を寄せる相手がいなければ、どうしようか。
チョコレートが好物でなければ、どうするのか。
両方に当てはまる自分には、まるで居場所がない。
靴箱からも熱量が弾け飛ぶこの日は、
手ぶらで登校するのがとても苦痛だった。
授業中。
今いるクラスが、パックのたまごと重なった。
きちんと詰められたたまごも、自らの意思で集まってはいない。
だから、予め決められた日にときめくことも出来ない。
でも―。
男子の動作は、いつもよりも大きいし、
女子の洋服は、いつもよりもかわいい。
乗っかれないまま、たまごのカラザのように、宙ぶらりん。
中学生になって、電車通学を始めた。
京浜東北線に乗り、しばらくするとチョコレート工場を通過する。
窓が開いている時は、風向きによって甘い匂いが車両に満ちる。
2月14日以外にも、こうやって毎日チョコレートは生産され、
どこかの誰かに届く。
車内アナウンスが、淡々と次の駅を告げる。
自意識は、板チョコよりも固かった。
乗りかえよう。
そそくさと席を立つと、成長痛の両膝がぱきりと鳴る。
先日、チョコレート工場に降り立ってみました
工場はお休みでしたが、ほのかに甘い匂いがしました