北京オリンピック後の最初の試合だけに、各国の思惑も見て取れました。
藤木麻祐子コーチのいるスペインは、北京のベテラン勢に加えて若手が入ったミックスチームです。
30歳代の選手が10代の若手に動きを伝授し、上手に世代交代を進めているように見えました。 |
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若い選手を送り込んできたロシアチームに近づいて、一人ひとりの年齢を聞いてびっくりです。
「18歳よ」
「19歳」
「17歳なの」
「19歳です。」
ロシアはナショナルBチームの若手を送り込んできました。
そして、観客席には、そんな若い選手たちをじっと見つめる目がありました。
この11年間、世界の頂点に立ち続けているロシアのポクロフスカヤ総監督です。 |
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ポクロフスカヤ監督「誰をナショナルAチームに入れようか選考に来たのよ。練習振りから観察しているのよ」
ロシアチームが一番気にしているのは、中国の動向です。
ポクロフスカヤ監督は、私に「日本の井村コーチはまだ中国にいるのか?」と聞いてきたほどです。 |
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中国は北京オリンピックのときとまったく同じメンバー。
ただ違うのは井村ヘッドコーチがいなくなったことだけです。 |
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「ハッピーバースデー トゥー ユー、 ハッピーバースデー ディア マリコ!」
試合を控えた二人に、サプライズが待っていました。
酒井麻里子:「あさってのデュエットを笑顔で泳ぎきれるようにがんばります。」
「ハッピーバースデー ディア ユキコ・・・」
なんと一日違いの誕生日。
酒井さんと乾さんはマドリッドで18歳になりました。
乾友紀子:「18歳になったのでもう少し大人の演技ができるようにがんばります。」
二人は18という数字の蝋燭を手に、記念撮影。
12月5日、いよいよ、試合当日です。
朝、二人の部屋をのぞいてみると、ゼラチンで髪をまとめている最中でした。
花牟礼:「いたいの?かゆいの?」
髪の毛を固め、髪飾りをつけ、お化粧をして、さあ、最後の準備です。 |
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果たしてどこまで世界の選手たちに伍して戦えるのでしょうか。
去年、世界ジュニア選手権ではデュエット2位につけた二人ですが、日本代表デュエットとしてのデビュー戦、その緊張感は格別です。 |
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審判は芸術面のみをチェックしていきます。
わずか1ヶ月半で作り上げた演技ですが、要所要所を元気よさとフレッシュさで決めていきます。
最後まで激しい動きを連続させ、笑顔を絶やしませんでした。
得点版に並んだ数字は9.8から8.9まで。評価は分かれました。 |
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しかし、二人は満足げです。
乾友紀子:「出番前は緊張していたんですが、やっているときはとりあえず必死で。」
酒井麻里子:「初のAチームとしてのデュエットを泳げて爽快な気持ちです。」
結果はスペイン、中国、ロシア、カナダ、に次ぐ5位。 |
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決して満足できる成績ではありませんでした。しかし、学んだことは少なくありません。
芸術面の表現力がいかに大切かを、二人は肌で感じることができたのです。
音楽と水と体の動きが一体となって、常に新しい世界を作り上げるスペインデュエット。
さらには観客を楽しませるための演出にも圧倒されました。 |
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スペインは芸術面だけで競うこのワールドトロフィーをこれまで一番うまく利用してきた国かもしれません。スペインで技術指導をしている藤木麻祐子コーチはこんな話をしてくれました。
藤木麻祐子:「世界選手権やオリンピックに向かう前に、どこまで芸術的なものを出していいんだろうかというのは皆、探り探りだと思うんですね。もしこのワールドトロフィーの試合で試してみて、いい点が出てみんなからもいい評判が出たら、ああこの方向で行こう、もっとこれを爆発させていいんやっていう気持ちになりますね。」 |
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過去、オリンピックのメダルにどうしても届かなかったスペインチームは、2007年のワールドトロフィーで10点満点を審判から引き出し、芸術面での自信を深め、その勢いで、翌年、北京オリンピックで銀メダルを獲得していったのです。 |
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各国の技術に大きな差がなくなっている今、芸術面での表現がより重要になりつつあります。今回、ひときわ高い拍手を受けていたのが、中国のフリーコンビネーション白鳥でした。 |
中国フリーコンビネーション「白鳥」 |
高く、バリエーションに富むリフト、工夫された動き、世界の国々はますます芸術面に磨きをかけてきます。
いまや上位8カ国の差がほとんどなくなってきました。
この群雄割拠の時代に、日本の18歳の二人が新しいスタートを切ったのです。
酒井麻里子:「大変だったんですけれど、すごく貴重な体験だったので。」
乾友紀子:「まだまだこれからもっと練習をして早く世界の上のレベルに上がりたいという気持ちは強くなりました。」 |
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