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編集後記
スポーツ界には「アスリートファースト」という言葉があります。
何よりも選手を大切に一番に考えていこうという基本理念です。
競技団体などの組織は、選手をバックアップする体制をとることが求められています。
もちろん競技団体も、日本を強くしたいと思ってさまざまな方策を施そうとするのでしょうが、本当に選手のためになっているのか、そこを冷静に考える必要がありそうです。競技団体の考え方次第で、選手が生きもし、死にもするのです。選手は駒ではないのです。
また、代表選手選考会というのは、どの競技団体でもそうですが、個人種目においては、
選手を選ぶと同時にその選手を育てたコーチが選ばれるのが通例です。デュエットという個人種目で二人の井村シンクロ所属の選手が選ばれながら、それを育成したコーチが代表コーチとして選ばれなかったというのは、とても不自然で説明がつかないものです。正直、一連の取材をしながら、釈然としないものを感じたのは私だけではなかったと思います。
2011年、新しいシーズンに入って、世界の中でまた大きな動きがありました。
7年間をかけてスペインナショナルチームで指導をし、彼女たちをオリンピックで銀メダルの座に押し上げた藤木麻祐子さんが、米国ナショナルチームのヘッドコーチに就任したのです。かつては女王の座にいた米国も北京五輪では日本と同じ5位。シンクロのすばらしさを教えてくれた米国チームを自分の手で立て直したいと、これまでにない新しい方法での指導を提案し、藤木さんは今東奔西走の日々を送っています。
今年2011年、7月にはオリンピックの出場権をかけて、上海で世界水泳選手権が行われます。中国に大きく水をあけられた日本は、米国とも厳しい戦いをしなければいけなくなります。
日本はまたロシアから振り付け師ガーナ・マキシモバさんを招聘し、新しいシンクロを模索する予定です。
それにしても、強くなりたい選手たちがたくさんいるのに、それをサポートする体制がなかなか取れず、付け焼刃的な方策しか取れないのは、どこに原因があるのか、冷静に突き詰める必要がありそうです。
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