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6月8日
6/8   オーストラリア編(3) 「AFCへの転籍」



町の人々にインタビュー

政府とサッカー協会が強力なタッグを組み、「Aリーグ発足」と「32年ぶりのW杯出場」を果たしたオーストラリア。
オーストラリアサッカー界に起きた2つの革命的な出来事に加えて、第3の革命として挙げられるのが、「アジアサッカー連盟(AFC)への転籍」です。
オーストラリアは長年、オセアニアサッカー連盟(OFC)にエントリーしてきました。
ですから、オーストラリアはW杯予選もOFCの枠内で戦ってきました。
ここで、問題となるのがこのOFCという枠組みです。

OFC加盟国は11カ国で、オーストラリアの実力は抜き出ていました。
代表同士の真剣勝負で10点差以上で勝つことも珍しいことではなく、強すぎるがゆえに、魅力に乏しい試合が当たり前となっていました。
また、OFCの加盟国のサッカーレベルが低いことは、オーストラリアにとっても「代表の強化」を図る上で、好ましくない状況でした。

代表ユニフォームを着ての、「真剣勝負」、「接戦」、「死闘」、「激闘」、という経験は選手を育て、その国の「サッカー」を育てます。
オーストラリアがOFCに加盟し続ける限り、強すぎるがゆえに「代表の強化」は進まない状況でした。
そこで、オーストラリアサッカー協会は思い切った行動に出ます。
それが、強豪ひしめく「アジアサッカー連盟(AFC)への転籍」でした。

日本、韓国、イラン、サウジアラビアなど、強豪揃いの「AFC」への移籍を実現するには、「OFC」、「AFC」双方の了解が必要でしたが、オーストラリアサッカー協会は政府の後押しを受け、念入りにロビー活動を展開し、実現不可能と思われたこの「AFCへの転籍」を実現させました。

そして、この「AFCへの転籍」こそが、
オーストラリア政府にとって極めて重要な意味を持つ出来事だったのです。

「AFCへの転籍」はオーストラリアがオセアニア地域を飛び出し、アジア地域に入ることを意味します。
オーストラリアにとって、この決断は単に、「サッカー」だけのことではありませんでした。
彼らの目指すべきターゲットは、「巨大なアジアのマーケット」であり、「サッカー」をきっかけに本格的なアジアへの進出を狙おうという政府の思惑があったのです。


カンタス航空がオーストラリア選手団のために
用意した特別チャーター機に乗せてもらいました。

サッカー協会キャロル運営部長はこの出来事について、このように語りました。
 
Q. 「AFCへの転籍」は、アジアのビジネスマーケットを意識したのでしょうか?
A. もちろんです。
「フットボール」がアジアの共通言語になっていますから。
我々は世界でもっとも急成長しているアジアのマーケットにかかわって生きたいと思っていました。特にスポーツの分野で。
しかしオーストラリア特有のスポーツ、クリケット、ラグビーやオージーボールはアジアとの接点がありません。
接点があるのはサッカーのみです。
ご存知のとおりスポーツ業界はビジネスチャンスも多いから、サッカーの試合を通して、国、文化、経済的な意味でもアジア進出をしたかったのです。

この「サッカー」をきっかけとした、オーストラリアのアジアへの進出というプランを描いたのはハワード首相でした。
我々の取材で、あるベテラン新聞記者はこのように答えてくれました。
 
A. 面白いことにこの一連の改革案は日韓W杯直後に持ち上がったんです。
なぜならあのW杯はオーストラリアと時差がほとんどなく、日中に見られる最初のW杯だったからです。
ホテルやクラブで観戦する人間が沢山いて、国民の興味が大変高かった。
ハワード首相がその視聴率をみて、改めてサッカーがオーストラリアでも人気の高いスポーツであることを認識しました。
それが改革への転機となったのです。

あの日本で開催されたワールドカップが豪サッカー界変革への触媒だったといえます。

なぜならあの試合が、サッカーが海外だけでなく国内でも人気の高い競技だということを証明してくれたからです。

私はそう確信していましたし、サッカー界の人間の多くがそう信じていたんですが、なにか証拠となるもの必要だったのです。
 
Q. そこでビジネスマーケットとしても魅力あるものとして捉えられたということになりますか?
A. 日韓W杯がサッカーというのは商業的にも価値があることを証明しました。
それから政府がサッカー界の浄化をおこない、財界に強いつながりをもつ、フランク・ロウイが指揮をとり、Aリーグができ、AFC転籍を果たしW杯出場を果たしました。
そのことでオーストラリアのサッカーは商業価値をさらに高めました。
ここ3年で天地が変わったような状態です。

オーストラリアサッカー協会は2005年に「Aリーグ発足」、「32年ぶりのW杯出場」、 「AFCへの転籍」という3つの革命を成し遂げました。
今回の企画でインタビューしたスポーツライターの藤島大さんが、このようなことを語ってくれました。
「どのスポーツでも、『大義』のあるチームは強い。」
そして、ドイツW杯でオーストラリア代表は『大義』のために戦うことになります。
その大義とは、W杯で結果を残すことで、オーストラリアにおける『サッカー』をメジャースポーツに押し上げること。そして、サッカーを確かな文化として定着させるための第一歩を踏み出すこと。

日本の前に立ちはだかる、オーストラリアサッカーの未来を背負った「サッカルーズ」。
言わずもがな、日本にとっては手強い相手であることは間違いありません。

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今回のロケの模様は
6月11日、6月18日の「サンデープロジェクト」
で放送されます。 是非、ご覧になって下さい。
 
 
    
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