10・9両国国技館
またしても「事件」は起きました。
その日私はサッカーの全日本ユース決勝を
埼玉スタジアムで実況してから、
両国国技館に移動するという予定でした。
予定通り、埼玉スタジアムから両国国技館に到着すると、
第5試合がちょうど始まる時間でした。
私は控え室のモニターで第5試合、
真壁・越中組対飯塚・曙組を見ながら、
自分の実況担当である、
「棚橋弘至対天山広吉」IWGPタイトルマッチの準備を進めていました。
第5試合が終わると同時に私の準備も終わったので、
次の試合はリングサイドで見ようと思い移動しました。
今振り返れば、これが、悪夢の始まりでした。 |
まさか、あんなことになるとは、この時点では想像できず。 |
第6試合「高山善廣・鈴木みのる組対山本尚史・永田裕志」の
熱い一戦をリングサイドで観戦した私は
試合後、高山・鈴木組がどんな「毒舌」を繰り出すのか
楽しみにインタビューゾーンに向かいました。
これが、恐怖体験の序章でした。 |
このあと、吉野にとって嫌な時が訪れた… |
マット界の帝王・高山善廣と世界一性格の悪い男・鈴木みのる。
私は直感しました。
インタビューゾーンで何かが起こると。
インタビュアーは先輩の櫻井健介アナウンサー。
私は櫻井アナが、
プロレス界最強の毒舌を持つ二人にどんな闘いを挑むのか?
しかと見届けようとこっそり、周りの報道陣にまぎれていました。
そして、最強の毒舌が炸裂しました。
鈴木「オイ!!どこまで歩かせるんだ!!」
櫻井「あ、ここで大丈夫です!!」
鈴木「オイ!椅子がねえぞ!!俺らには椅子がねえのか?冷てえなー!!」
櫻井「ハイ、すいません。」
鈴木「お前!!どこの人間だ!!」
櫻井「テレビ朝日です。」
鈴木「あー、感じ悪いなー!!」
私は先輩が毒牙にかかる様を
他の報道陣とともに遠巻きに見ていました。
すると、突然、想定外の声が響き渡りました。
「オイ!!吉野!!」
声の主は高山善廣でした。
私は蛇に睨まれた蛙のごとく一瞬で固まりました。
高山「オイ!!吉野!!お前、ちゃんと後輩を教育しとけ!!」
吉野「ハイ!!?」
高山「お前の教育が悪いんだよ!!お前をもう一度新人教育するぞ!!」
吉野「ハイ、すいませんでした。」
まさかの事態に、私はパニックになり、
理不尽な要求にも関わらず思わず必死で謝ってしまいました。
情けない限りでした。
先輩である、櫻井アナの必死の受身を興味本位で見に行った
私のよこしまな心をまるで見抜いたかのようなダメだし。
大勢の報道陣の中から、瞬時に私を発見し、
鋭いダメだしをするマット界の帝王。
全てにおいて、私の完敗でした。
その日は櫻井アナと二人で
高山・鈴木組の毒牙によって刻まれた心の傷を舐めあいました。
高山さん、今後もご指導よろしくお願いします。 |