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9月23日 北朝鮮紀行 その1「入国」

私はW杯最終予選、「北朝鮮対バーレーン」と「北朝鮮対イラン」の2試合を中継するため、今年の3月21日から4月2日まで、北朝鮮に行ってきました。
少し時間が空きましたが、連載形式でもう一度、「北朝鮮」滞在を振り返ってみます。
始まりは平壌に到着するまでの出来事を前回のコラムに肉付けして、より詳細にお伝えします。
  平壌空港到着から入国審査、税関まで

平壌空港到着から入国審査、税関まで
北京から平壌までは高麗航空という北朝鮮唯一の航空会社の飛行機を使用します。
現在のところ、火曜日と土曜日の週2回、定期便が飛んでいます。
中国・審陽からも平壌に定期便が出ていますが、やはり同じように火曜日と土曜日に定期便が出ています。
ですから、平壌空港が民間に開放されているのは火曜日と土曜日だけになります。
北京空港内にある高麗空港のカウンターでは金日成主席のバッジをつけた女性が対応します。

飛行機はIL62という100人程度が座れる、1960年代に製造された旧ソ連製の飛行機で、機内は非常に狭く簡素な造りになっています。座席の前のほうにはビジネスクラスの席もありました。

北京空港で撮影した高麗航空機


機内食はかなりのボリュームがありました。いわゆる普通の機内食に加えて、別のプレートでカレーやシチューが出るなど食べきれないほどのボリュームでした。
機内食(シチュー)
機内食(プレート)

5年前に訪朝した経験がある同行スタッフによると、5年前に比べると機内食はかなり豪華になったとの話でした。

飲み物は北朝鮮国内で製造されている「リョンソンビール」と、水、梨のジュース、トマトジュース等がありました。「リョンソンビール」は黒ビールの味ですが、冷えていないので正直、味はいまいちでした。
ちなみにリョンソンの由来は北朝鮮の平壌に「リョンソン工場」という食品工場があり、そこで製造されたものは全て「リョンソン何々」と呼ばれるそうです。「リョンソンソーダ」はスプライトに似ていて美味しかったです。

キャビンアテンダントはみなさん、容姿端麗で、胸元に金日成主席のバッジがあるのを除けばごく普通のキャビンアテンドと変わりません。
ちなみに機内での撮影は原則禁止されており、撮影していると撮影機器をバッグにしまうよう言われます。ただ、機内食を撮影したり、乗客同士の記念撮影に関してはそこまで厳しくは注意されませんでした。
ただ、キャビンアテンドや窓から地上を撮影しようとすると厳しく注意を受けます。

機内紙は「月刊朝鮮」というカラーの雑誌と、「労働新聞」「平壌タイムズ」が希望者には配布されます。「労働新聞」は北朝鮮の代表的な新聞で、「平壌タイムズ」は英字新聞です。

平壌空港到着時は戦闘機のような着陸を体感しました。
恐らく燃料をできるだけ少なくするためだと思われますが、着陸15分ぐらい前から、機内のエアコンが切れ、機体が揺れ始めます。
エンジンの熱のためか、機内の温度が急激に上昇し、尚且つ急降下を繰り返します。
さながら「サウナの中でジェットコースターに乗っているような感覚」でした。
飛行場の周りには大きな建物はなく、見渡す限り灰色の世界でした。

機内を出て到着ゲートまでは200mほどの距離をバスで移動します。
飛行機を降りて、ターミナルビルを写真で撮影しましたが、特に注意はされませんでした。

平壌空港


ただ、外国人プレスがバスに乗らずに長々と写真を撮影していたのはさすがに注意されていました。

ターミナルから撮影した飛行機とバス


入国審査は非常に簡単で、「フットボール?」と聞かれたので「イエス」と応えただ
けでした。我々とともに入国した在日朝鮮人の方の話だと、北朝鮮ではビザを発給した時点で入国審査は終わっているということでした。
入国審査の際にパスポートとビザを見せますが、入国のスタンプは押されません。
ですからパスポートの記録には中国入国を証明するスタンプだけが残ります。
ビザは入国審査の時に係員に見せ、一度は返却されます。
そして出国審査の時に係員に見せ、そのときに没収されます。

税関では7人中2名が荷物を明けられました。荷物を明けられた人はランダムに選ばれただけで、荷物をあけられてもしっかりと説明すれば係員は何も言いませんでした。

機内で渡された税関の申告用紙には反共和国的な出版物等は持ち込み禁止等の注意事項が記載されていたので、日本から北朝鮮の記事が書かれた雑誌等はなるべく持ち込まないほうがいいかもしれません。

また税関では携帯電話とパスポートを没収されました。
事前に携帯電話を没収されることを聞かされていたので、私たちは携帯電話に記録してある、仕事で必要な電話番号をあらかじめ紙にメモしておきました。
(中継で必要となるテレビ朝日各所の電話番号など、いつも携帯電話のメモリーに加えてある情報などです。)
この時、テレビ朝日のスタッフ2名が事前に携帯電話を没収されることを聞いていたため、あらかじめ日本から携帯電話を持ってきていなかったのですが、人数分、携帯がないという理由で係員がクレームをつけてきました。
恐らく、過去の日本人の入国経験から個人で1台以上の携帯電話を持っていることは彼らの共通認識であったのだと思います。
そこで、私たちが携帯電話を他に隠し持っているのではないか?という疑問から、そのような質問をしたのだと思います。

同行した在日朝鮮人の方が事情を説明し、理解してもらいましたが、お国柄を感じました。

尚、携帯電話は袋に入れて封をし、引換券を渡されます。その引換券を帰国する時に空港で提示すれば携帯電話が返却される仕組みです。
次回は滞在中、我々と常に行動をともにしてきたガイドさんの話をします。

つづく
 
 
    
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