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身長
177cm
出身地
埼玉県さいたま市
出身校
県立浦和高校→
早稲田大学
入社年月日
1992年4月1日
星座
天秤座

2022/01/28 SDGs最前線!今年も取材を続けます!

 今から14年前の2008年6月、気候変動の取材で、私は、北極圏に位置するグリーンランドの氷床の上を歩いていました。どこまでも広がる氷の大地は、燦燦と降り注ぐ太陽の光に照らされ思いのほかに暖かく、溶け出した水は激流となって氷床の奥底へ滝のように流れ落ちていました。取材に同行した地元の科学者は、「この激流は500メートル下の岩盤まで到達し、潤滑油のように働いて氷床を岩盤から引きはがし、次々と氷河を生んでいる。温暖化によりそのスピードが上がっている…」と指摘していました。


グリーンランドの溶けた氷床

 そして、去年夏に発表されたIPCC(気候変動に関する政府間パネル)第6次評価報告書WG1は、地球温暖化が人間の影響で起きていることは疑う余地がない、と初めて断定しました。私は、これまで科学者たちが警告してきた「気候危機」が、現実に近づいているのではないかと肌で感じています。

 2013年11 月、スーパー台風ハイエンは中心気圧が895ヘクトパスカルにまで急発達し、最大瞬間風速90メートルという猛烈な勢力で、フィリピンのレイテ島を直撃しました。私は、高さ4メートルという巨大な高潮が発生した現地レイテ島に向かい、壊滅的な被害を受けたタクロバンの町を取材しました。家が流され食べるものもなくなり、明日を生きるために配給を求める人々の緊迫した表情が強く印象に残っています。


高潮に襲われたフィリピン・タクロバン

 2015年11 月、太平洋に浮かぶ小さな島国マーシャル諸島の孤島キリ島を取材。島では温暖化による海面上昇が深刻化し、大波が島の護岸を砕き、大量の海水が陸地に侵入、島全体の9割の土地が海水に浸かりました。島民が私たちに語った言葉が今でも忘れられません。
 「世界の皆さんに一言、言わせてください。この島でこんな災害が起きていることを、みなさんはどう感じますか? この先何が起きるのかもわかりません。私たちがどうしたらいいか、みなさんに考えてもらいたいのです…」 


キリ島の浸食された護岸

 日本では毎年のように繰り返される豪雨災害の現場を取材してきました。
 2009年兵庫県佐用町豪雨災害、2011年紀伊半島大水害、2014年広島豪雨災害、2016年岩手豪雨災害、2017年九州北部豪雨、2018年西日本豪雨、2019年台風15号、19号など、どの現場も大変な状況にありました。その後も毎年のように被害は続いています。

 激甚化する豪雨災害の一因に気候変動による温暖化の影響があるのではないか、と指摘されています。気象庁によれば、日本の平均気温はこの100年で1.28℃の割合で上昇しています。気温が1度上がると大気中の水蒸気量は7%増加すると言われています。40年ほど前と比べて、恐怖感を覚えるという時間雨量80ミリ以上の猛烈な雨の降る回数は、約1.9倍に増えました。近年の豪雨災害の一部は、スーパーコンピューターを活用したイベント・アトリビューションと呼ばれる新しい解析手法によって、温暖化との関連性が徐々に明らかになりつつあります。

 では、激しさを増す気候変動に対して私たちはどのように備えればよいのでしょうか?大切になってくるのが、「適応策」と「緩和策」です。豪雨災害から住民の方々にいち早く避難していただくために、大雨警戒レベルによる避難呼びかけなど、私たち報道機関もその対応に努めています。堤防の強化や迅速な避難など、環境の変化に対応していくのが、いわゆる「適応策」です。

 そして、温室効果ガスを減らす取り組みが、「緩和策」と呼ばれています。政府は2030年度までに、温室効果ガスを2013年度比で46%削減し、再生可能エネルギーの比率を現在の約20%から36~38%に引き上げるとしました。「緩和策」の重要な柱の一つが、CO2を出さない再生可能エネルギーを広めることなのです。


五島市の浮体式洋上風力

 再生可能エネルギーは、自然の豊かな地方に多く眠っています。私はこれまで日本各地で、自然を破壊することなく上手に活かし、電気や熱を生み、地域の再生に成功した現場を取材してきました。そこには、豊かな自然と共生し、新たな雇用を創出し、生き生きと暮らす住民の方々の姿がありました。

 例えば、人口減少に苦しんできた長崎県五島市では、地域の海を活かした日本初の浮体式洋上風力発電を誘致。浮体式風車は台風の通り道に位置しながら一度も倒れることなく地元に電気を供給し続け、五島市の再エネによる電力自給率は56%にも上っています。風車の海中部分には多くの魚が集まる漁礁のような効果も確認され、地元の漁協も期待感を高めています。
 改革の中心は、地域の新電力「五島市民電力」を立ち上げた清瀧誠司さん(81)。長年地元でガソリンスタンドを経営してきた清瀧さんは、「この歳になりますので、“石炭”から“油”に変わる時の時代を見てきているんですよ。今度は“油”から“再生可能エネルギー”。五島の経済は本当に変わりますよ。」とおっしゃいます。「五島市民電力」では地域の再エネ電気を地域に販売する「電力の地産地消」を行い、地域内でお金の循環が始まっているといいます。
 島には100%五島産の再エネ電気を利用する企業も現れ、水産加工会社では環境価値が評価され首都圏などでも売り上げを伸ばしています。さらに風車のメンテナンス業務を担う企業も生まれ地元の雇用も増えました。

 気候変動対策でもあり、地域再生にもつながる再エネを軸にした持続可能な取り組みは日本全国で始まっています。そして、私がこれまで各地で取材してきた動画が、ユーチューブのANNnewsCHでまとめて見られるようになりました。タイトルは「山口豊アナが見たSDGs最前線」。各地の取り組みは、持続可能な未来への夢と希望に溢れています!ぜひ、以下のサイトからご覧ください!

https://m.youtube.com/playlist?list=PLKeSkVQhqoOpQlrwA9Ong5Yx-3vbQlaGL&fbclid=IwAR2fbGWbVxxJDH_luTWDIJCu8KcFqrjrY1s6UdLAEBIAOaiOJIkuKhZHCc0