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身長
177cm
出身地
埼玉県さいたま市
出身校
県立浦和高校→
早稲田大学
入社年月日
1992年4月1日
星座
天秤座

2015/2/16    御嶽山からインドネシアへ。火山防災のあるべき姿は。

去年、57人もの方が死亡し6人の方が行方不明になった御嶽山の噴火。日本が110の活火山を抱える火山大国であることを思い出させる大変痛ましい出来事でした。
あの時、私は現地に取材に行っていて、あの噴火の現場から生還した方々にお話を伺いました。みなさん、同僚の方をなくされるなど、ご自身もぎりぎりの状態の中で山を下りるという非常に過酷な経験をされた中で、当時の状況などを細かくお話してくださいました。
どの方のお話もとても胸に刺さるものばかりでした。


御嶽山

以来、私はなぜあのような悲劇が起きてしまったのか、ずっと考えるようになりました。
みなさん、秋晴れの中で御嶽山に上り、昼前に山頂に着いて、火口の周りでお弁当を食べるなど楽しい時を過ごしていたのです。それが突然の噴火によって暗転したのです。
あの悲劇は防げなかったのか?科学技術の発達した日本で、当時山頂付近にいた方々に噴火を知らせることはできなかったのか?

その後、報道ステーションの取材で、何人かの火山学者の方々とお話をする機会を得ました。すると、「実は御嶽山は噴火の前にいくつかの兆候を示していた。それを専門家が見ていれば、噴火は事前に把握することができたはずだ。あの悲劇は防げたはずだ。」というお話を複数の学者の方から伺ったのです。

御嶽山では、噴火のおよそ2週間前に火山性地震が増えていた時期がありました。そのデータは、東京の気象庁のモニタールームで職員が見ていました。しかし、その段階では噴火警戒レベルを平常の1から火口周辺規制の2に上げることができませんでした。

そこにこそ大きな問題があった、と岡田弘北海道大学名誉教授は指摘しました。気象庁のモニタールームには気象庁の職員しかいませんでしたが、仮に、その場所に御嶽山を知り尽くした火山の研究者や専門家がいれば、少なくとも現地に足を運び御嶽山に登って、火山性ガスの変化を確認するなどして、噴火につながる兆候をつかんでいたはずだというのです。
今回の御嶽山の噴火は、今の日本の火山監視防災体制が大きな問題を抱えている中で起きてしまった悲劇だというのです。

1990年代以降、日本では各地で火山の観測所などの無人化が進み、各火山に観測機器は設置されているものの、それを全国4つのセンターで遠隔監視するという体制に切り替えられました。現在24時間監視が必要とされる50の活火山の内、監視員が常時詰めている有人の観測所は5つしかありません。地元で山を見続けていて、誰よりもその火山のことを知り尽くしている、いわば火山のホームドクターのような人がきわめて少なくなってしまったのです。

また、日本では火山の監視は気象庁、研究は大学の研究者、防災は各自治体というように火山を受け持つ組織がいくつにも別れ、縦割りの構造になってしまっています。
これは、活火山を抱える世界の国々の中で日本だけの特殊な構造だそうです。
海外ではアメリカの地質調査所やインドネシアの火山地質災害軽減センターのように、火山に関することは、国の一つの組織がまとめて行っていて迅速な対応が取られているといいます。
今や、日本の縦割りの体制は、火山防災の世界標準から大きく遅れてしまっているということなのです。

専門家の方々は、この縦割りと観測所の無人化という日本独特の構造が改められなければ、いつか次の噴火がおこり再び大きな犠牲が出てしまうのではないかと心配しています。

今回、私は、その火山監視防災の世界標準が一体どのようなものなのか、報道ステーションで取材し特集として先日放送しました。
127の活火山を抱える世界最大の火山大国インドネシアでの取材では、日本が失ってしまった火山監視防災の現場の本来あるべき姿を取材することができました。


インドネシア、ケルート山

今回の取材を通して、一日も早く、気象庁と大学の研究者が一つになる、いわば、地震火山庁のような組織が日本にも必要なのではないか、と強く感じました。

この特集は、報道ステーションのホームページに動画でアップされています。
http://www.tv-asahi.co.jp/dap/bangumi/hst/feature/detail.php?news_id=41181

ぜひご覧ください。

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