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4月20日 ある事件で確信するプロレス班員のキャラクター


3月20日名古屋でのプロレス中継でのことです。
私にとっては大事件。「いたぁぁい体験」をしました。

実況中継前、試合の打ち合わせまで1時間ほどあった控え室でのワンシーン。
解説者の一人である安田拡了さんが編集企画した、
藤原嘉明さんの関節技の本『復刻・幻の藤原ノート』を、
ワールドプロレスリングの放送内で紹介しようということになりました。
そこで「実際に関節技をかけている所を見せてもらおう」ということに…。

議論の結果‘関節技をかける人’は、
同じく中継の解説者で、元プロレスラー・山崎一夫さんにあっさりと決定。
一方‘関節技をかけられる人’は・・・?
一体・・・誰?

控え室を包んだ沈黙は、本っっ当に一瞬でした。

どこからか聞き慣れた声が。
「野上!!おいしいなぁ!!こんな経験、なかなかないわぁぁ。」
吉野アナの声でした。
その声が発端となり、スタッフが口を揃えて、私を盛り立て始めました。
「俺も昔は経験したから。」と古澤アナ。
「勉強させていただきます。」と後輩の板倉・三上。
「適任だ。」と言葉少なくプロデューサー。

収録はすぐに始まりました。着替えなどありません。



関節技体験収録は、フェイスロックから開始。


そこから約15分間。「関節技」の奥深さについて学んだ私。

仰向けになり、山崎さんが私の上から腕を極める関節技を行う際。
腕を極めながら、実は腹部の上辺りのある一点をひじで押さえられています。
すると驚くことに、全く身動きがとれなくなります。
何とか逃げようと動き回りますが、ピクリとも動くことが出来ません。
動けば動くだけ痛みも増し、体力も消耗していきます。



関節技一つでも、細かくて緻密な作業が実は行われているのです。


・ ・・とまぁ、こんな風に書けば何となく聞こえはいいのですが、
わたくし・・・・・



無茶苦茶もだえ苦しみました。


「やま・・ざ・・っ・・さ…ん…。い…たいっす。い…っ。」と、
声もほとんど出ず。


15分が経過して、ようやく収録が終わりました。
私は丁寧に教えて下さった山崎さんに、
感謝の意を込めて「有難うございました!」と深々と頭を下げました。
すると、その2秒後でした。ちょうど頭を上げ終えたくらいです。

山崎さんが、再び私の体を捕まえたのです。
久しぶりに関節技をかけた山崎さんが
「私にもっと関節技を教えたい!」という気持ちになったのでしょうか。
カメラは、もちろんもうまわっていません。
にも関わらず、なんと私への「関節技講義」は継続されたのです。



はい。こんな感じ。カメラは・・・なし。


まさかの展開は約15分。つまり関節技体験計30分。
ようやく終わった頃には、ヘトヘトでした。

一部始終を見届けた後輩の板倉・三上は、
「野上さんを尊敬します」なんてゆういつものご機嫌取り。
お前らの、あの時の「自分じゃなくて良かった」てな具合の安堵の表情を、
俺は見逃してねぇぞ。

ただ、三上がこれらの光景を見届けていた「ギャラリー」の様子を、
偶然写真におさめていました。



私が痛がり苦しむ場面を見るスタッフ一同。


この写真は、プロレス実況アナウンサーのキャラクターを如実に表しています。
「親心たっぷり」で我々を育てて下さるジェントルマン古澤アナと、
「人並み外れたいたずら心」で我々を可愛がって下さる吉野アナ。
痛がる私を見つめる2人の表情をアップにしてみると・・・。



古澤アナ


吉野アナ


ね?

3年が経過して、
プロレス班員の「キャラクター」を完全に理解した自信があります。
今回は、同期の大西が別の仕事で帯同できませんでしたが、
恐らく大西がいても、この役は私が担当していたことでしょう。
それが、3年間で私が築き上げた私の「キャラクター」です。

さて、実況中継前に行われたこの収録。
本来ならばもうワールドプロレスリングで放送されているはずなのですが、
なんとまだ未放送!!
それをディレクターに問うと、
「あれな、放送時間の都合で、お蔵入りになるかも。大変だったのにすまんな」と伝えられました。

至極、あっさりと。

これもまた、私の「キャラクター」故でしょうか。

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