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3月29日   ワールドプロレスリング実況四銃士の闘魂コラム#109
〜プロレスの灯を消すな〜

ずっと懸念していたことが現実のものとなってしまった。

週刊ゴング一時休刊

昭和43年の創刊以来、39年間プロレスの専門誌として
一途にプロレス情報を伝えてきたこの雑誌が
なくなってしまう事にショックを隠しきれない。

時には厳しく、時に暖かい論調でプロレスを報じ、
またある時はプロレスの流れさえも作ってきた「週刊ゴング」。
誰よりもプロレスを愛してきたこの雑誌が
プロレス界に果たしてきた役割は限りなく大きい。
ライバル誌である「週刊プロレス」とともに、
ここまで業界に影響を与える専門誌を私は知らない。

しかも部数減によるものではなく
本社の不祥事により(ここではあえて省くが)
休刊を余儀なくされたことに一人のプロレスファンとして
怒りとやるせなさを覚える。


私が「ゴング」を読み始めたのは1970年代後半
まだ「ゴング」が「月刊」だった頃である。
小学生だった私にプロレスの楽しさと興奮を与えてくれ
プロレス実況という今の仕事まで導いてくれた。

テレビ朝日に入社し、プロレス実況を担当するようになってからは
「週刊ゴング」は貴重な実況資料であり、
またある意味ライバルであったように思う。
「自分の実況はポイントがずれていなかったか」
「自分が考えた試合の意味とこれからの流れは外れていないか」
「週刊ゴングは、プロレス界はいまどこを向いているか」

時に反省し、時に反論して自分自身を成長させてきた。
今回の休刊は切磋琢磨してきたライバルがいなくなってしまうような
そんな一抹の寂しさを覚えるのである。


プロレスの人気低迷が叫ばれて久しい
戦後、力道山率いる日本プロレスという団体からスタートし
猪木と馬場というスターを擁した新日本と全日本の二つの団体に分かれ
人々を魅了してきたプロレス

離合集散の果て、今では数十の団体に分裂し
担当している自分でさえもプロレス界全体を把握するのが
困難なほどになってしまった
団体の増加に反比例するように人気にかげりが生じてきたのは
皆さんも知る通りだ


地球上で栄華を誇った恐竜が滅びたようにプロレスは滅びるのか

これだけ人々を熱くさせ涙を流させるプロレスは消え行く運命なのか

私の答えは否である

プロレスは死なない
プロレスの灯は消えない
かつてプロレスに少しでも心を熱くした人なら
分かっているはずだ
プロレスの素晴らしさを

今回、その素晴らしさを伝えるものが一つ、歩みを止めた
業界にとってこれは間違いなく逆風だろう
このピンチをチャンスに変えることがプロレスなら出来るはずだ
幾多のレスラーがピンチをチャンスに変えてきたように

私はプロレスファンである
プロレスに魅了され新日本プロレスという老舗団体の実況を
担当するようになったが、スタート地点は一人のプロレスファンである
プロレスによってここまで成長することが出来た自分が、
プロレスの灯を消さないためにいま何が出来るのか
改めて考えなければいけないと思う


会場を埋めるプロレスファンも、「週刊ゴング」が戻ってくる日を待っています。
   
 
    
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