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言葉の現場検証
 
  reported by 田原浩史

1月10日の朝日新聞の一面に「超新星」に関する記事がありました。
「超新星」は天文学用語ですが、
スポーツ新聞やテレビのタイトルなどでも目にすることがあります。
また、韓国の男性ダンス・ヴォーカルグループでも「超新星」がいますね。

実際スポーツニュースの原稿で出てきたかどうか、
土曜日の「ニュース&スポーツ」で一緒の大西アナウンサーに聞いてみました。



風格のある大西アナ

大西・・・ 「そういう表現があったかどうか、あまり記憶にないのですが、
記憶に無いくらいもしかしたら、自然に使っているかも知れません。
違和感はありません。」
「『超新星現る』っていいますよね。」


これまでは無名だったのに、突然現れて大活躍した選手などに、
「彗星のように現れ」とか「○○界に超新星現る」などの表現を使います。
その活躍や、きらめく存在感に「星」のイメージはぴったりです。
しかも、そのスケールが並外れていると、
ただの新星ではなく「超」をつけたくなるのは、もっともだと思います。

ところが、「新星」の場合は「超」をつけると、とんでもないことになってしまうのです!

以前(「ら・などの使い方」で)、
新聞用語懇談会用語懇談会放送分科会に出席していると書いたことがありました。
そこで、「気になる言葉の事例」のひとつとして「超新星」が話題になりました。

「超新星」・・・ 広辞苑によると
星の進化の最終段階における大規模な爆発現象。
ひとつの銀河に匹敵するほど明るくなることもある。
大質量星が自らの重力を支えきれずに崩壊し爆発を起こす場合には、
あとに中性子星ブラックホールが残される。
近接連星中の白色矮星(わいせい)の表面にもう一方の星のガスが降り積もった結果、
星全体が書く爆発を起こす場合もある。



広辞苑

つまり、星が消えてなくなる直前の、大規模な爆発現象のことです。

大物新人を「超新星」になぞらえると、
…爆発的な活躍をしたが、すぐに消えてなくなってしまう存在…ということになってしまいます。
突如現れて、けた違いの強さや大活躍を見せた新人選手。
今後も、どれだけ大きくなっていくのか、ますます期待と注目が集まります。
ところが、スケールの大きさを表そうとして「超新星」と銘打つと、
「今どんなに活躍していてもこれが最後。
まもなく消えてなくなる運命だ」…ということになるのです。

そんな名前の宿命…ではないと思いますが、
新聞用語懇談会放送分科会、読売テレビの道浦アナウンサーの話では、
読売テレビに「笑いの超新星」という関西若手お笑い芸人が腕を競う
登竜門的コンテスト番組がありましたが、残念ながら終了してしまったそうです。
番組によっては終了が決定した直後に、視聴率がグンと良くなることがあります。
この番組も終了間際に最後のきらめきを放って高視聴率をマークしていたのでしょうか。
だとすると、まさに超新星爆発と言えなくもないと思いますが…。

その番組に出演していた芸人さん達には、
今度は、若手芸人の誰もがそのタイトルを獲得することを夢見る番組、
テレビ朝日系列の笑いの最高峰「M−1グランプリ」で、輝いて欲しいと思います…。



ということで、様々な言葉に「超」をつけてその程度を強調しようとする言い方は、
まだまだ衰える気配はありませんが、言葉の組み合わせによっては、
とんでもない意味になってしまうことがあります。
特に「超新星」は気をつけないといけません。

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