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ストーリー
第18話

『ピルイーター』 (2004年2月25日放送)
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 警視庁警務部勤務の湊とOLの里香の心中と思われる遺体が発見された。小指と小指を靴紐で結び、かみそりで頚動脈を切っていた。妻のある湊にとって里香は不倫相手。しかも無理心中とあっては警察にとって大スキャンダルになってしまう。上層部は心中ということで細かいことには目をつぶろうとする。

 そんな中、湊の上司だった大河内が特命係にやってきた。「湊が女と心中するとは思えない」という大河内は、右京と薫に調べて欲しいという。断れば聴聞会にかけられる可能性もある。右京らは大河内の依頼を引き受けることにする。

 改めて遺体を調べた右京らは里香の傷が自分でつけたものではないことを確認する。どうやら先に里香を殺してから、湊が自殺したらしい。これが無理心中ということになれば殺人事件だ。捜査一課の伊丹らも動き出す…。

 里香がアルバイトをしていた店のママによると、湊が里香に一目ボレし、二人の関係が始まったらしい。里香もすっかり湊に惹かれていたようだったが、肉体関係はなかったという。そんな2人がいきなり無理心中などするのだろうか?しかも、積極的だった里香からではなく、湊から無理心中を仕掛けるとは…。右京らは首をかしげる。

 事件を無理心中で立件しようとする動きの裏には上層部の権力争いが絡んでいるという情報も入る。様々な思惑が絡み合う中、捜査を続ける右京と薫は、現場検証の写真からホテルの部屋に湊と里香以外に誰かが来ていたことをつかむ。男と愛人、そしてもう一人となると、男の妻である可能性が高い。右京らは湊の妻・杏子が事件に深く関わっているのではないかと推理する。

 妻なら夫の浮気相手を殺す動機は十分ある。さらに自分を裏切り浮気をした夫自身のことも許せずに殺害してしまった。そして二人を無理心中したように偽装し、罪を逃れる…。そんな犯行を予想する薫だったが、右京は否定する。浮気相手を憎んで殺害した妻が、夫と浮気相手が愛し合っていたことを認めてしまうような心中を偽装するだろうか?右京は湊が自殺し、湊自身が心中を偽装したのではないかと考える。

 右京らは急いで湊の妻・杏子の自宅を訪ねる。が、杏子はいない。大河内も様子を見に来ており、三人は部屋の中を調べる。すると白い封筒が見つかり、中には杏子が書いたと思われる便箋が入っていた…。右京がその内容を読もうとしたその時、薫が杏子を発見する。風呂場で手首を切って絶命している状態で…。

 便箋には、里香を殺害したのは杏子だと書いてあった。あの日、杏子はホテルの部屋に湊と里香を別々に呼び出し、二人に別れるよう嘆願する。しかし逆に里香も杏子に対して湊と別れてほしいと言い出す。そしてその状況に耐えられなくなった杏子は、思い余って持っていた剃刀で里香の首筋を切りつけてしまったという…。杏子はしばらく呆然としていたが、湊に促され部屋から出る。そしてその後、湊は里香と無理心中を図ったように見せかけ、自殺したのだった…。

 杏子の死で、事件は終焉を迎えた。しかし右京は湊の自宅で杏子の死体が発見されたとき、大河内がベランダで一人泣いていたことに何か引っかかるものを感じる。我々は本当に事件の真相に辿り着いたのだろうか?そんな疑問を抱いた右京はあらためて大河内のもとを訪ねる。確かに手紙は杏子によって書かれたもので、その内容も事実である。ただ湊と里香の間に肉体関係はなかった。もちろんプラトニックな愛情を否定する気はないし、倫理観が邪魔したのかもしれない。しかしそれならば湊が里香のために自殺し、心中に見せかけるような真似までするだろうか。里香はカモフラージュでしかなく、本当は他に隠したい浮気相手がいたのでは。右京はそんな考えを大河内にぶつける。

「やつが女と心中するとは思えない」

湊と里香の死体が発見されたとき、大河内は右京にそう言った。普通に聞き流せば、それは湊が心中などするような人間じゃない、という意味に取れる。しかし“女性”とは心中しない、そういう意味だったとしたら?右京は湊の浮気相手は“男”だったのではないかと考えた。もしそうだとしたら妻である杏子にはどんなことをしてでも隠しておきたいはず。もちろんだからと言って事件の結果は変わらない。しかしもし本当にそうだとしたら杏子は勘違いで殺人を犯し、自殺してしまい、里香は奪われる必要のない命を奪われたことになり、二人の死はまったく浮かばれなくなってしまう…。

 そんな話を聞いていた大河内は湊の本当の浮気相手、それは自分だと告白する。男を愛した罪がこんな結果を招いてしまったのか、男を愛することは悪いことなのか。そう自問する大河内だったが、右京は大河内に対して愛することは悪くないと言う。そしてそのことを隠していたことも非難されることではない、と。しかし隠しておいたことが今回の悲劇を生んだことは間違いなかった。(つづく)


無理心中
無理心中を図った者は殺人罪に問われるが、被害者に同意の上で殺害した場合には、その罪は刑法202条で6ヶ月以上7年以下の懲役・禁錮と定められており、通常の殺人罪より軽くなる場合もある。
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