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ストーリー
第14話

『氷女』 (2004年1月28日放送)
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 久々の記録的な寒波に襲われた東京で会社員の池永という男の凍死体が発見された。都内では凍死者が続出していたが、池永の遺体は心臓まで凍りついていたという。鑑識の米沢からそんな話を聞いた右京は興味を示す…。

 調べを進めると、都内で発見された9件の凍死者のうち、心臓が凍っていたのは池永のみだったということが判明する。薫も首をかしげるが、捜査一課では事件性はないと判断。右京らはまたも独自で調べを始めるが、既に池永の財布を盗んだという男が拘束されていた。単なる昏睡強盗の仕業だったのだろうか?しかし男は倒れていた池永から財布を奪っただけで酒など飲ませていないという。しかも男が財布を盗んだときには、池永は汗をかいていたとか。心臓が凍りついていたのに汗を?右京らはますます悩みを深くする…。

 ひょんなことから池永の遺体はどこかで冷凍され、気温の上昇とともに体表面に結露したのが汗に見えたのではないかと推理できた。その謎が解けると、さらに米沢の報告で今朝の最低気温で内臓が凍るには3日はかかることが判明。となると、やはり他殺だろうか?右京と薫は勢いづいて捜査を進める。

 池永の妻・よしみから池永の行きつけの店を聞いた右京らは、その居酒屋の主人から取引先の水産加工会社社長・来栖と飲んでいた事実をつかむ。と、そこへちょうど池永の会社で働いているレナを連れた来栖が現れた。来栖は単なる仕事上の付き合いで、昨夜もこの店を出た後に会社へ戻ったという。そのとき別の常連客の貴和子が派手な洋服を着た女性と腕を組んで歩く池永を見かけたという。水商売風の女性だったらしいが、事件と関係があるのだろうか…。

 今のところアリバイのない来栖、そして大型冷凍庫があるスーパーの副店長をしている妻のよしみが怪しい。しかし貴和子が見たという水商売風の女性を誰も見ていないというのも気にかかる…。右京と薫は勤め先まで貴和子を訪ね、改めて詳しい状況などを聞く。大学の研究室で天然ガスの研究をしている貴和子は、あの店以外は詳しくないとか。仕方なく捜査の範囲を広げると、小さなバーに池永と水商売風の女が立ち寄っていたことがわかった。店のマスターによると、女性は金の結婚指輪をしていたという。結婚指輪ということは妻のよしみが変装していたのだろうか。池永に多額の保険金がかけられていたこともわかり、ますます怪しくなるが、池永の結婚指輪はプラチナ。どうやらよしみではないようだ。

 美和子の取材で4年前、池永と同期の益田という男がやはり凍死していたことが判明。益田はレナからセクハラを受けたと告発され退職していた。その事件は益田と昇進争いをしていた池永が仕組んだとの噂も。さらにレナと池永は特別な関係でもあったようだ…。右京と薫はレナに事実関係を確認するが、レナは池永の殺害を否定。そして右京のアクセサリーはしな;いのか、という質問に、金属アレルギーだから、と答える。

 レナはかなり怪しいが決め手がない。池永の血中アルコール濃度もそれほど高くなく、どうやら犯人はわざと池永に酒を飲ませず凍死の恐怖や苦痛を味合わせたかったらしい。ということは、池永に対してかなりの恨みを持つ者の犯行ということになるが…。

 右京と薫はあらためて池永と水商売風の女が立ち寄ったとみられるバーへ行き、マスターにレナの写真を見せ、確認を取る。しかしどうやら水商売風の女はレナではなかったようだ…。そこで右京はふと以前マスターが水商売風の女がライターを持っていなかったと証言していたことを思い出す。水商売で働いている女なら、商売道具ともいえるライターは必ず持ち合わせているはず…。目撃された女は、実は水商売に詳しくないのではないだろうか。

 しかも目撃された女の結婚指輪は日本では非常にめずらしく、わずか4%しかないという金のものだった。そういえば貴和子も金の結婚指輪をしていたはず…。右京と薫は貴和子のもとを訪ね、目撃された水商売風の女は貴和子だったのではないかと追求する。すると貴和子はあっさりと池永と不倫の関係にあったことを白状する。しかしそれ以上の情報は得られなかった…。

 さらに貴和子の身辺調査を進めると、彼女が独身であることが判明する。となると池永と貴和子は不倫の関係ではなかったということになる。もしかしたら4年前に死んだ益田は貴和子の夫だったのではないか。セクハラの濡れ衣を着せ、益田を死まで至らしめた池永を恨み、接近して殺害した…。そうだとすれば全て辻褄が合う。そうなると池永と不倫の関係にあったレナも危ない!右京と薫は急いで貴和子のもとへ向かう。

 貴和子が研究をしている大学で貴和子と接触した右京と薫はレナのことを聞くが、レナはたった今帰ったばかりだという。貴和子とレナは天然ガスの新型プラントについて話していたらしい。貴和子の研究内容はLNGだった。LNGとは液化天然ガスのことで、天然ガスをマイナス160度まで冷却し、液化するのだという。そんなLNGの研究をしている貴和子なら天然ガスを冷却する設備を自由に使うことも可能だ…。

 あなたの夫が益田だった、そして益田を死なせた池永に恨みを抱き殺害したのではないか、右京は貴和子にそう問い詰める。そして業を煮やした薫が冷凍設備を探し始めようとすると、貴和子は右京と薫を冷凍設備まで案内する。冷凍設備のある研究室まで行くと、まさにレナがそこに閉じ込められていた。薫が助け出そうとするが、貴和子はスイッチを入れてしまう。ジリジリと設備内の温度が下がっていく…。ライバルを蹴落とすためだけに夫を殺した池永とレナは死ぬべき。そう言い放つ貴和子に右京はふとこう言う。


「なぜ結婚指輪を外さなかったのですか?」


 貴和子はまだ益田を愛しているといるからだという。ならばこんなことはやめなさい!右京は強く言った。レナを殺してしまってはご主人の名誉を回復することは永遠に出来なくなる、こんなことをしてもご主人の無念は晴れない。右京のそんな言葉を聞いた貴和子は我に返ってロックを外す暗証番号を吐露する。間一髪のところでレナは助かった。

 死んだ夫が結婚指輪を通して、貴和子にそれ以上罪を重ねないように導いてくれた。右京はそう考えた。しかしどんな理由があろうと復讐は許されない。貴和子の心も今は凍り付いているが、いつか解ける日が来るはず。そう、終わらない冬などないのだから…。(つづく)


総合商社のキャリアウーマン
宇野レナ /川合千春
大学の研究員
山中貴和子 /木村多江
融点と凝固点
すべての物質は温度や圧力の変化によって、「固体」・「液体」・「気体」の3つの状態に変化し、この3つの状態を物質の“三態”という。そして物質が固体から液体になることを“融解”といい、融解が起こる温度を“融点”、逆に液体から固体になることを“凝固”といい、凝固が起こる温度を“凝固点”という。
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