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ストーリー
第11話

『秘書がやりました』 (2004年1月7日放送)
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  衆議院議員・蜷川輝政(十貫寺梅軒)の変死体が産廃処理場から発見された。遺体は両手、両足など5つに切断された上にまっ黒焦げ。鑑識の米沢(六角精児)から写真を見せられた薫(寺脇康文)は思わず目をそむけるが、右京(水谷豊)は冷静に分析し始め、さまざまな角度から撮られた写真を見つめる。

 どうやら政治家の汚職を常に追及していた蜷川は、かつて暴力団に襲われて重傷を負ったこともあるらしい。今回も事件が明るみになってまずい関係者による謀殺という見方が有力なようだ。しかし、右京は蜷川の遺体そのものに疑問を抱く。切断するのも、焼くのも、遺体の身元を特定しにくくするため。なぜ犯人は見ただけで身元がわかるぐらい中途半端に燃やし、せっかくバラバラにした遺体をまとめて捨てたのか…。

 蜷川の事務所を訪れた右京と薫は、三峰涼子(室井滋)、吉池昌夫(菅原大吉)、風間ひさし(木下政治)という3人の秘書と対面。議員バッヂについて質問する。「バッヂ?」訝る涼子らに右京は、蜷川の遺体に議員バッヂがなかったことを指摘。蜷川の息子・輝明(久松信美)も背広なら必ずつけるほどバッヂを誇りにしていたのに、と首をかしげる。秘書たちは一様に心当たりは無いというが、本人が取ったのでなければ犯人が持ち帰った可能性が高い。が、謀殺事件なら逆にバッヂをつけておいた方が効果的なはず。右京は改めて「謀殺事件とは思えない」と涼子らに告げる。

 父の後継者として出馬が決まった輝明に励まされ、右京らが事務所を出ようとすると、蜷川の妻・るみ子(今 陽子)が事務所にやってきた。「あたしに見られるとマズイものでもしまいこんでいるかと思って」と、引越しのため荷物を詰めた段ボールを引っ掻き回している。輝明は右京らの視線を気にしてあわてて止めるが…。

 依然として判然としない蜷川の死因に、右京は急性心不全などで急死したのではないか、と推理する。だとしたら、犯人は殺人のように見せたかったということになる。可能性としてなくはないが、なぜ犯人はそんなわざわざそんな危険を冒したのか…。薫の疑問にさすがの右京も「わかりません」というほかない。

 それにしてもるみ子が言っていた「マズイもの」とは一体何なのか?右京らは直接るみ子に質問をぶつけると、浮気の証拠を探していたのだという。浮気をしていても秘書の涼子がすべて証拠を隠していたとか。るみ子は議員秘書など議員のためなら妻も欺くし、世間も欺く、場合によっては議員本人を欺くこともある、と吐き捨てる。永田町の常識は世間の非常識…。その言葉を肝に銘じておけば事件も解決する。そんなるみ子の言葉に、右京らは謎を解くカギを感じる。

 右京と薫は再び三峰とともに事件が起こったホテルを訪れ、三峰に蜷川が拉致されたとされる状況について問い質す。どうやら蜷川は「お勉強の時間」と称して、ホテルの別の部屋で愛人と過ごしていたらしい。しかしいつもは長くても2時間くらいで戻ってくるにも関わらず、その日に限っては3時間以上経っても戻ってこなかったという…。

 そんなやり取りをしていると、三峰の携帯に吉池から電話が入った。吉池たちも警察の人間と話しているという。右京たちがそこへ向かうと、警察の人間というのは伊丹(川原和久)と芹沢(山中たかシ)だった。とあるマンションの一室でホステスの死体が発見されたのだが、なんとそのホステスの銀行口座に蜷川の事務所から500万円振り込まれていたという。三峰によるとそれは“手切金”とのこと。どうやらそのホステスは蜷川の愛人で、蜷川が拉致されたときに一緒にいたのでは?しかも手切金が振り込まれたのは、なんと事件当日だったという…。

 「主人に酷いことした連中」。その言葉の意味がわかった右京は薫とともにあらためてるみ子のもとを訪ねる。やはり死んだホステスは事件の当日、蜷川と一緒にいたらしい。しかも蜷川は拉致されたのではなく、心臓麻痺による死亡、いわゆる“腹上死”だった。世間体の悪い亡くなり方なので、もちろん公表は出来ない。ホステスの口座に振り込まれたお金も“手切金”ではなく、いわば“口止め料”。そして本来ならばそのまま執務中の突然死とでも公表すれば済んだはず。しかし秘書の三人は逆にその死を汚職追及の末に報復を受けた悲劇のヒーロー像を作り上げるために利用した…。

 やはり永田町の常識は世間の非常識だった…。しかしならばなぜホステスは事務所から多額の“口止め料”が支払われているにも関わらず殺されなければならなかったのか。少なくとも秘書の3人が殺す必要はない。なんとホステスを殺したのはるみ子だった。

 蜷川の浮気の証拠を掴んでいたるみ子はその相手知りたさに、ホステスのもとを訪ねた。口止め料が支払われていることを知り、秘書たちが何を企んだのかを理解した。しかしホステスはそこで話が違う、警察へ行くと言い出す。それを聞いたるみ子はとっさにホステスを黙らせないと、と思い近くにあった壷でホステスを殴り殺してしまったという…。るみ子は、その時“妻”の立場でいられたらこんな馬鹿げたことはしなかったという。“議員の”妻ではなく…。

 「まるで異星人」。薫は三峰やるみ子たちのことをそう言い放った。しかし右京はこう答えた。

 「向こうもそう思っていますよ。どうしてあの人たちには理解できないのだろうかって」(つづく)


蜷川議員の第二秘書
三峰涼子 / 室井滋
議員バッヂ
国会議員が身に付けているバッチ。正式には「議員章」という。国会議員にとって身分を証明する唯一のもの。たとえ総理大臣であっても、この議員バッチを付けていないと国会議事堂に入ることはできない。
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