戦評
安藤が2位になりファイナル進出決定 グランプリシリーズも後半戦となる第4戦フランス大会。3大会を経て、すでに2戦目の試合となる選手も多く、前回登場時からプログラムがどうパワーアップしたか、比較が楽しい大会となった。 女子シングルはアメリカ大会・カナダ大会のメダリストがふたりずつ顔をそろえる超激戦に。カナダ大会優勝のジョアニー・ロシェットは、「ドン・ファン」の雰囲気をさらに色濃く作り上げたフリーで、観客を魅了する。ライバル3人がまだ少し幼い雰囲気のスケートをする中で、彼女は手の動きも顔の表情も、隙のない大人の演技を見せてくれた。フリー前半にジャンプミスが続いてしまい、結果こそ4位。しかしプログラムそのものは進化を続けていることを、まずロシェットが印象付けた。アメリカ大会2位・キミー・マイズナーのフリーも、ストレートラインステップなどで何げないフラメンコらしさがアップ。世界チャンピオンらしく、「この人なら必ずいいものを見せてくれる」と安心感のある演技をするようになった。また今回のマイズナーで注目したいのは、フリーでなんと、トリプルアクセルに挑戦したこと!昨シーズン世界選手権を制したとはいえ、アメリカ大会では安藤美姫に破れ、年下の浅田真央やキム・ヨナとの争いも楽ではない。完璧に彼女たちに勝つには、マイズナーもトリプルアクセルをものにするしかないのだ。今回は転倒してしまったが、世界チャンピオンの高難度ジャンプへの挑戦――女子シングルの今後の戦いをどう変えていくか、大きな楽しみとなった。そしてやはり素晴らしかったのは、優勝したキム・ヨナ。カナダ大会で多くの人の目をひきつけたフリー「あげひばり」は、ただ強いだけの表現、美しいだけの表現ではなく、音楽のニュアンスひとつひとつを体で表す緻密なプログラムに仕上げてきた。技術的にも3回転−3回転がさらに大きく、高くレベルアップしているのだから恐ろしい。グランプリファイナルでもその先の大会でも、日本勢の最も強力なライバルとなるのは、やはりこの16歳のようだ。 ライバルたちが一戦目以上の演技を見せる中、少し残念だったのは日本の安藤美姫だ。アメリカ大会でグランプリシリーズ初優勝を経験。連続優勝に向け、周囲の期待がヒートアップするなか、本人の調子はそれほど良くなかったという。フリーではいきなり3−3で転倒。それを引きずってか、スケールの大きな曲に飲み込まれてしまいそうな弱弱しさが随所に見られた。後半はほとんどジャンプをこなすためのプログラムになってしまい、アメリカ大会で見せたストレートラインステップの迫力もない。ただ、最初の転倒以外に大きなミスは続かず、昨年よりも気持ちのコントロールがうまくいくようになったのは確かだ。今回はちょっと足踏みした安藤だが、それでも結果は2位。いち早くファイナル進出も決まった。今年の安藤美姫なら、フランス大会の足踏みも次に大きく進むための助走にしてしまうだろう。 男子シングルは日本から、小塚崇彦、南里康晴が登場。高橋、織田の2トップを追う二人だが、特に小塚崇彦はこの試合がシニアデビュー戦となる。現世界ジュニアチャンピオンということで多くの注目を集めたが、ショートプログラムはまさかの最下位。やはりシニアの壁は厚かったのだろうか。しかし軽やかなトリプルアクセルは高さだけでなく飛距離もあり、巧みなエッジさばきもスケーティングスピードも、すでにトップ選手のレベルに到達している。フリーでは少し挽回し、順位は6位。シニアの雰囲気に慣れ、演技に余裕が出てくる今後が楽しみだ。アメリカ大会で最下位の屈辱を味わった南里康晴は「ひとつでも順位を上げること」を目標に参戦。フリーの「カルメン」では以前のような照れも見せず、堂々とした視線をときおり観衆に送って見せた。特にジャンプの決まった前半は、彼の本当に表現したい「カルメン」が垣間見え、得点もパーソナルベストを更新。少し自信をつけ、次の試合に向けて気持ちを切り替えられそうだ。 フランス大会、男子シングル上位陣は、これまでの3試合で見られなかった迫力あるジャンプ勝負があった。ロシアのドブリンがサルコウの4回転を2度成功させれば、優勝したジュベールはトウループの4回転を2度成功。アメリカから中国までの3大会、ほとんどクリーンな4回転は見られなかったことを考えると、目を見張るようなレベルの高さだ。また、キャラクターになりきって演技するジュベール(優勝)、コミカルな振付けを体いっぱいで見せるプレオベール(2位)、物語の王子様のようなロシアの正統派スケータードブリン(3位)と、表彰台メンバーはみな個性的で、勝負の行方以外にも充分お客さんを楽しませてくれた。4回転、そして個性――。小塚崇彦や南里康晴が、高橋、織田に対抗するために絶対に手に入れたいもの。それを持つ選手が、フランス大会にはいた。日本のふたりはここで、何かを学ぶことができただろうか。 文/Hirono Aoshima
結果 SP=ショートプログラム FS=フリースケーティング
【女子シングル】
【男子シングル】
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「ミキティスマイル again」安藤美姫の2戦目! 日本人3大会連続メダルとメダルラッシュに沸くフィギュアスケートグランプリシリーズ。今週は第4戦フランス大会。初戦アメリカ大会で復活をとげた安藤美姫選手に注目!! その前に立ちはだかるのはカナダ大会優勝の「カナダのエース」ジョアニー・ロシェット、「17歳の世界チャンピオン」キミー・マイズナー、カナダ大会で3位でシニアデビューを飾ったキム・ヨナと強敵揃いだ。グランプリシリーズのポイントは現在2番目につけている安藤選手、フランス大会で優勝すれば上位6名のみが進出できるグランプリファイナルへの切符が確実となるだけに見逃せない!! 男子は「ジュニア世界No.1」小塚崇彦が登場、シニアデビューの大会で表彰台を狙う。世界選手権2位「4回転サイボーグ」ブライアン・ジュベール、「ジャンプの申し子」アルバン・プレオベールなど注目の選手を相手にどこまで自らの力を出せるかがポイント。 グランプリファイナルへ!そして世界一へ!今週も熱い氷上サバイバルから目が離せない!! |