第44回全日本大学駅伝

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瀬古利彦が斬る!
関東大会を斬る

6月末としては気温が高くなく湿気も感じず(18時時点で気温25.5度、湿度52%)、最高のコンディションで関東予選は行われた。
そんな中、1位の山梨学大、2位の日体大は、選手ほとんどが上位にいたので安心して見ていられたが、他の大学は結構上位が入れ替わっていて混戦。特に本戦進出の5位以下、8位まで差は8人で約26秒。秒差の戦いになった。

山梨学大の新留学生エノック・オムワンバ(1年)は、歴代の留学生に比べてレベルが高いわけではないが、安定感もあり、予選会出場のメンバーの中では抜けていた。ここで稼ぐという、まさに山梨学大の狙い通り。しかし今回は、彼が出場する4組の前組までで2位を確保。全体が力をつけてきたということであり、留学生頼みではないという点で、本戦でも上位に入る可能性が高い。

日体大は好選手が入ってきているので、この結果はある意味当然だ。むしろ、最近本戦で上に来ないのが不思議なくらいであり、今回こそぜひ期待したい。ドカンと差を広げられるエースがいないのが弱点と言えば弱点だが、服部翔大(3年)あたりが引っ張れば、上位に食い込む。

3位の帝京大、4位の神大といった、特別なエースがいないところが本戦に出てくるのは、心情的にうれしい。駅伝本来の「みんなで勝つ」という醍醐味が見られる。

5位の東海大は、村澤明伸(4年)、早川翼(4年)の2大エース抜きで、予選突破したのはよく頑張ったと言える。飛車角抜きで戦うのは、それだけ自信があったのだろう。中でも中川瞭(2年)が、フォームもよくいい走りをしていた。

予選落ちした中では、青学大のエース、出岐雄大(4年)がブレーキになってしまったのは残念だった。3月のびわ湖マラソンの影響か、故障か、本戦で彼が見られないのはさびしい。
中央学大も、3組目まで5位ながら最終組で失速。秒単位の戦いの厳しさに敗れた。
城西大の村山絃太(2年)は、オムワンバに食らいつき頑張っていた。しかし、あのペースなら、もっといってほしかった。あえて、物足りなかったと言いたい。フォームが良く、走りが柔らかく、将来性があるのを感じた。

駒大、東洋大、早大、日大、中大、上武大、明大のシード校を入れた本戦を考えると、私は駒大、東洋大の2強だと考えている。
駒大は高いレベルで、選手間の差があまりない。普通に走れば、間違いなく強い。
東洋大は設楽兄弟が力をつけているし、全体に安定している。柏原が抜けても、山登りのない全日本では大きい影響はないだろう。
早大は、1〜2年生が育っていない印象で、2強に比べたら苦戦すると思う。優勝候補ではあるが、エース大迫傑(3年)をどこに起用して上がっていくかというのがポイントだ。
東海大もかなり強い。区間数が少ない方が力を発揮するし、村澤、早川に加え、中川も入れた布陣は、上位進出も大いに予想出来る。

個人対決としては、早大・大迫と東海大・村澤に期待したい。2区やアンカーで争ったら面白い。彼らには、今後日本の長距離界を背負うであろう選手としての、自覚を持って戦ってほしい。