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読書の秋…
なるほど。
これまでの人生で秋といえば“食欲”がぶっちぎりで筆頭だった私ですが、
ここはひとつ、とっておきの1冊をご紹介しましょう。
それが、こちら!!
「Missing」 作:本多孝好
大学生の頃に読んだのですが、一気に読破。その後も何度も繰り返し読んでいます。
「Missing」は短編集。
「祈灯」は事故で妹を亡くした“幽霊ちゃん”が、それ以来、死んだのは姉のほうであって、自分を妹だと思い込んで生きているお話。
そして「瑠璃」は瑠璃色の瞳を持つ4歳年上の従姉妹ルコと、しもべのように付き添う“僕”の物語。人と違う生き方を望んでいたはずのルコは、ある時、自分がごく普通の人間だと気づいてしまいます。その姿が、またなんとも切ない…
その他にも「眠りの海」「蝉の証」「彼の棲む場所」の全部で5つのストーリーが入っています。
ジャンルでいうと、ミステリーに分類されることが多いのですが、
殺人事件が起こり、名探偵が登場、
最後は大広間で「犯人はあなたです」となり一件落着…なんていう話は全くありません。
謎を解き明かすこと物語もあれば、一生解けない(解かないという方が正しいかもしれません)謎を含んだ話もあります。
どの物語にも共通するテーマは「死」
その人が生きていたという証。それが残された人たちの心にどんな形で残っているのか。
作中で老婆が語る台詞がとても印象的でした。
「一年に一度でいい。一分でも、一秒だっていい。自分が死んだあと、生きていた日の自分を生きている誰かに思い出してほしいと願うのは、そんなに贅沢なことなのかい?」
どうしょうもなく切なくて、悲しくて、寂しい…
でも、そんな話が、透き通るような透明感に包まれた文章や、時にシニカルで、時に温かい会話で描かれることにより、心にスッと染みてきます。
秋の夜長に、ちょっぴり刺激的な部分もありますが、
一人で静かに読みたい、そんな1冊です。
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