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  reported by
宮嶋泰子


今日は見る側にとっても一番楽しいフリーコンビネーションをお伝えいたします。


フリーコンビネーションが世界水泳のシンクロ競技に入ってきたのは2003年のバルセロナ大会でした。チームフリー演技より二人多い10人で、ソロパートあり、デュエットパートありと、プールを舞台としてバレエのように5分間演じて競い合うものです。


2003年、この種目の最初の優勝国となったのは日本でした。当時友松由美子コーチが「ライオンキング」をテーマにして自由に動く動物たちを振付けました。見ている側が楽しかったのはもちろんですが、演じている選手たちもとても面白かった5分間だったそうです。


それから6年
世界のフリコンは、進化し続けていました。


それでは早速、いつものように元世界チャンピオン立花美哉さんにご登場いただきましょう。






元世界チャンピオン立花美哉の眼 その6 
7月22日「フリーコンビネーション決勝」


立花美哉さん  

総評:
フリー・コンビネーションはショーに近い種目です。テクニックを前面に押し出して競うものでもなく、テクニックとアーティスティック面をプラスしたチーム・フリーとも違い、テーマがはっきりわかるものの方が見やすいです。


テーマがわからないまま見ていると5分間と言うのが長く感じてしまいます。テーマが理解できないと演技に入り込みづらい種目ともいえます。


審判に対するアピールも同様です。一つの舞台を見ているようなイメージで演技構成を作っている国が上位に入ってきました。


ロシアがこの種目に出場していないので、その分メダル争いが熾烈になりました。



スペイン 
レッド・ツェッペリン「天国への階段」

 
スペイン

ソロのパートがこのフリーコンビのキーになっています。予選ではフェンテスがソロパートを泳ぎましたが、決勝ではメングアルが登場。


スターはスターですね。
出だしで、9人が水の中に入り、メングアルが舞台に1人登場します。
そのときから圧倒的な期待感がありました。


最初のリフトでメングアルが倒立をしましたが、このとき、一瞬、倒れそうになりました。そのとき、下の台を支える選手の1人が、ぐっと手を出して、メングアルの体を支えました。とっさのときにこの対応は見事でした。リフトの台を担当する選手たちもベテランなだけにどんなことにも対応できる能力があるのですね。さすがです。

 
スペイン

全体的には切れもあったし、トップに君臨してくるのは納得できる構成と演じ方だと思いました。


ハードロックをシンクロに持ち込んだ挑戦は、フリーコンビネーションならでは、スペインならではの挑戦でした。



★ 中国
「白鳥の湖」

 
中国

この演目を初めて、去年見たとき、ものすごく感動したのを覚えています。
「白鳥の湖」というバレエを忠実に、まるで水中バレエのように構成しているのは素晴らしいと思いました。


前半のできはスピード感もありよかったのですが、中盤からそれが見られなくなって残念でした。


ラストのポーズは印象的で、一度見たら忘れられないものでしょう。
作品として、後世にわたり語り継がれるものの一つになるのでしょう。


中国にとってははじめての銀メダル獲得となりました。



★ カナダ
「ストリートダンス」
 

 
カナダ

頭を黄緑色のバンダナで覆い、最初から最後まで踊りまくるイメージを通しました。
ものすごくエネルギッシュで、見ていて爽快感があるほど全力を出し切っていました。


去年の12月から作り始めたというだけあって、今回の屋外のプールを意識して作られています。


楽しいことが大好きなカナダらしいテーマ性で、コンビネーションならではの構成でした。


演技の構成やテーマに関してはっきりしているので、好みが分かれるでしょうが、あの演じきるパワーと勢いは見ていて気持ちがスカッとするくらい、彼女たちの力を感じました。


かつて、アメリカとカナダがシンクロ界に君臨していましたが、カナダはロシアの台頭と時を同じくして凋落の一途をたどり、長い間表彰台から姿を消していました。


しかし今回は、もう一度復活したいという強い意気込みが選手やコーチ全員から感じられ、それが爆発したのがこのフリコンでしょう。


チーム全員で表彰台に上ったのは世界水泳では実に15年ぶり。1994年のローマ大会以来の出来事です。それはそれは大喜びだったのもうなずけます。


カナダ



★ イタリア
「アフリカ」

 
イタリア

リフトの種類の豊富さに驚かされました。ジャンプ、スタックあり、それもいろいろな形でやっていたので、バリエーションの豊富さではナンバーワンです。


アフリカと言うテーマ性もはっきりしていたので、彼女たちのいいところが出ていました。
地元と言うこともありますが、一般の人も見ていて理解しやすい内容で、観客を取り込むことに成功した例でしょう。


青空の屋外プールにぴったりの作品でした。



★ 日本
「ル・レーブ(夢)」

 
日本

出てきたときに水着がきれいだと思いました。
上位4つに入れなかった理由は、遊びがないところでしょう。


遊びの構成でうならせるのか、ロシアのような徹底した構成と同調性でうならせるのか、はっきりしていませんでした。


ピシッと決まるところがなく、いつもぱらぱらとしていた。もったいない。
全体を通して、びしっとしたところが一つもなかったのは残念の一言。


2年前のメルボルン世界水泳の演目をそのまま使ったものではあるけれど、同調性、技のきれ、並び、この3つをロシアデュエットのようにびしっとそろえていれば、また別の評価がつけられていたかもしれません。


日本




★ ウクライナ
「白鳥の湖」

 
ウクライナ

一番驚いたのが、出だしのリフト。ものすごく高くて驚かされました。違いは脚であげていること。これは独特です。そしてこれは一つの売りになっています。


いまや飛ぶだけのリフトはどこもやっていません。
飛ぶだけだったらウクライナぐらいやらないと誰も驚かないでしょう。








<宮嶋 泰子>


今回の世界水泳は、シンクロとしては大変珍しく種目ごとにめまぐるしい変化が起きています。ロシアが、この若い選手たちではとてもフリーコンビネーションまで手が回らないとポクロフスカヤコーチが判断して、出場を見合わせました。


カナダが表彰台にあがったのは2001年の世界水泳福岡以来ですから、8年ぶりのことです。


表彰式


それではフリーコンビネーションの結果をお伝えしましょう。


1位:スペイン  2位:中国  3位:カナダ  4位:イタリア 5位:日本
6位ウクライナ  7位:英国  8位:ブラジル 9位:ベラルーシ 10位:メキシコ
11位:オランダ  122位:エジプト


結果と得点の詳細はこちらからご覧ください。↓
世界水泳・公式結果掲載サイトです。
 

スペインシンクロが初の金メダルを獲得しました。ロシアがいない中での金メダルですが、関係者にとっては嬉しさもひとしおでしょう。


今回の曲、レッド・ツェッペリン「天国への階段」を選んだのはアンドレア・フェンテス選手です。


振り付けもみんながアイディアを出し合い、ああでもない、こうでもないとやってみてはビデオで撮影してモニターで確認すると言う作業を繰り返して作っていました。


6月中旬にバルセロナの国立スポーツセンターを訪れたときにはまだ最初の振り付けを作っている段階で、果たして世界水泳までに完成するのだろうかと心配したほどです。


ヘッドコーチのアナ・タレスは「まだこんなちょっとしかできてないの、って思われると嫌だから、撮影してもいいけど、日本で放送はしないでね」と言われてしまったほどです。


さらには、7月に入って、藤木コーチから「毎晩11時までフリコンを作るのに追われています」と切羽詰ったメールが入っていたほどです。


完成したのはなんと大会の1週間前でした。


アンドレア・フェンテスは「でもこれがスペインのやり方だから」と肩をすくめて笑っていました。


しっかり帳尻を合わせてくる。さすがです。


みなさん、この作品をご覧になりましたか?
この異色のハード・ロック。それも哀愁漂うハード・ロックです


胸にジーンとくるんです。
曲と演技の映像が重なり、いくつものシーンが心に焼き付けられるのです。


「シンクロで見る人の心を揺さぶりたい」
これがスペインシンクロが目指すところです。


私の心は、わしづかみにされてしまいました。



喜びいっぱいのスペインチーム

本心を言うと、半年前に見た中国の白鳥があまりに素晴らしく、今回、中国が初の金メダルを獲得するのではないかと内心思っていたのですが、この屋外プールではあの繊細な舞台芸術はそれほど映えなかったように思います。


ハード・ロックのパワーが勝りました。
何をもってその会場を支配するか、演目選びの基本を見た思いがしました。


それにしても、みんなの力を合わせて作るパワーは何ものにも勝るのですね。


さらに、スペインチームは33歳のジゼラ・モロン選手をはじめとして30代の選手が3人、25歳以上となると6人もいるのです。これを最後にと思ってがんばってきた選手もいるので、其の喜びはひとしおだったと思います。


感動と涙でくしゃくしゃのアナ・タレスヘッドコーチ           


藤木麻祐子コーチ

世界水泳ローマ2009公式HPはこちら >>
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