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Vol.54 「スタイリストさん」(2007/09/10)

『日刊ゲンダイ』でご紹介している、“アナウンサーの仕事”。
メーキャップに続いて、今回は衣装の話です。

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「はいっ、はいっ…」

華奢な腕で、スーツケースをごろごろ引いている。
片手には携帯電話。イチゴのストラップがしきりに揺れている。
スタイリストの青ちゃんだ。
彼女にお世話になって、3年になる。
スーツケースの中身は、今週分の衣装だろうか。

アナウンサーの衣装は、基本的にはスタイリストさん達に用意して頂いている。
サイズも好みも人によって様々。
番組の趣旨を大切にしながら、適度に流行も取り入れてもらう。

衣装ロッカーには、予備も含めて3〜4着が常備されている。
事前に打合せが出来なかった時は、
貼られたメモを見ながら、予め用意して頂いた衣装を選ぶ。
「ゆーこさんへ☆」と書かれたそこには、詳細が記してある。
このジャケットにはこのインナーを。
シャツは、スカートの中に入れるのかどうか、など…。

青ちゃんが一層張り切ってくれるのは、バラエティの時だ。
「今日、こんなのどうです??」
「あ、スパッツ可愛い☆」
「やだー、ゆーこさん、最近はスパッツを“レギンス”って言うんですよぉ」
短めのワンピースに、流行のレギンスを合わせて。
ニュースの時には絶対に着られない、スリップドレスやショートパンツが、
この時とばかりに登場する。

本番前になると、青ちゃんの目はきらりと変わる。
ネックレスは曲がっていないか?
(大ぶりのものは、ピンマイクにぶつからないように安全ピンで止めてもらう)
靴の音は大丈夫か?
(スタジオでヒールの音が響かないように、靴の裏には全て、粘着テープが貼ってある)

そして、本番後。彼女の一言はとっても嬉しい。
「今日のボケ、ナイスでした」
「えー、ボケたつもりないのに!」
そう言いながら、衣装にスチームアイロンをかける青ちゃんの手は止まらない。
アイロンもそこそこに、お弁当も食べなきゃ。今日は、大好きなひれカツだよ。



『虎の門』オンエア前に
「エナメル素材の襟元がポイントです☆」(撮影/青ちゃん)


(「日刊ゲンダイ 週末版」9月10日発刊)
   
 
 
    
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